戸田屋正道

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隠居日和
■8月1日(月) [平成28年7月22日、磯部晶策氏が他界しました。享年91。]

ご冥福をお祈り申し上げます。私の菓子作りに大いに影響を与えた人です。氏は、近年の食品があまりにも食品添加物に頼りすぎていること、また食のファッション化に大変危惧を抱いておりました。誰よりも深く学び、誰よりも広い知識を持ちながら自分には厳しく、潔癖でいつも紳士を貫き通していました。暖かな眼差しの中にも、鋭い視線で食品を見つめる姿には説得力があり、私たちに「磯部理念」を示してくれました。氏亡き今も「磯部理念」は私たち食品に携わる者のバイブルとして、いつまでも君臨し続けると信じています。当店の理念としても掲げさせて頂いている「磯部理念」は、いくら時代が進もうと不変の理念として長く後世に残さなければなりません。この「磯部理念」は私どもが使命感をもって守り伝え、今以上に普及させなくてはならないと念じてやみません。 いつの日か、何も知識のない子供が口にする食品が、磯部理念の四条件を満たしている日が来ることを願いつつ、ご冥福をお祈り申し上げます。
磯部理念 食品づくりの四条件
一、安全で安心して食べられること
二、ごまかしのないこと
三、味のよいこと
四、品質に応じて価格が妥当であること

菓遊専心 戸田屋正道

戸田正宏


[138]

■菓子が取り持つご縁 [4月4日(土)]

坂東三津五郎さんのお陰で、随分儲けさせていただいた。
このたびも、三津五郎さんの葬儀に合わせて山形新聞が当店とのエピソードを記事にしてくれたことで、お客様から沢山の反響をいただいている。
後で聞いたことだが、そもそものきっかけは地元の老舗料亭と三津五郎さんが親しくしていた御縁とのこと。
料亭の女将が当店の菓子を送っていたらしい。
私と女将は30年来のお付き合い。謂わば友達の友達は友達である。そこに菓子が介在したことは言うまでもない。
坂東三津五郎さんのお気に入りは「ティラミス大福」。当店のロングセラー商品である。
ティラミス大福の誕生は今から20年以上前、ティラミスが大ブームの時である。洋菓子屋ならどこでも作り始めた時。和菓子屋である当店もこのブームに便乗しようと開発したのが「ティラミス大福」。マスカルポーネクリームチーズのコクが命である。
イタリアのこのチーズのメーカーは、どうせ一過性だろうと、マスカルポーネクリームチーズを増産せず品薄となった。当然値段は上がり、その結果類似品の安物のチーズが出回った。残念なことに殆どの菓子屋が類似品に手を出してしまったのだ。かくして味のわかるお客に見破られ、遂に一過性に終わってしまったのである。
しかし、相次ぐ値上げに耐えて、本物を使い続けた菓子屋は今でも「ティラミス」を作っているし、当店もまた超ロングセラーとしてお客様に支持され、愛され続けているのである。
坂東三津五郎さんからは「はなまるマーケット」というテレビ番組のゲスト出演の時に「ティラミス大福」をご紹介いただき、その後、全国各地で催されている「おめざフェア」にも出店させていただいた。
その他、テレビや雑誌等、何度も取り上げていただき、そのたびに売り上げ増に結びついている。
また、山形へお越しの節に当店にお立ち寄りいただき、親しく歓談させていただことは記憶に新しい。
膵臓癌で入院した時には一日も早い平癒を願い、お見舞いを申し上げさせていただきました。
快気の返礼品が届いた時には安堵したのもつかの間、訃報の知らせに、愕然としました。
三津五郎さんとのエピソードが記事になり、当店にも沢山の弔意が寄せられましたが、ご恩返しの出来ないまま旅立ってしまわれました。
三津五郎さんにはまだまだ生きていて欲しかった。残念無念です。
ご冥福をお祈り申し上げます。

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■神の存在 [1月5日(月)]

地球温暖化が原因と言われて久しいですが、世界のあちらこちらで異常気象が収まりません。日本でも自然災害により財産や尊い人命が奪われています。もう人間の力ではどうにもなりません。これ以上災害が起きないように祈るのみです。
災害が発生するたびに大自然の怖さを見せ付けられますが、他方、私たち人類は大自然の働きによって大きな恩恵を受けていることも忘れてはならないと思います。
目に見えない大きな恩恵ほど、なかなか気付きにくいものです。空気や水、太陽の光、大地の恵み等々、生きるのに欠かせないものはみなタダです。私たちは目に見えない、何か大きな力によって「生かされて」生きている存在なのです。
遺伝子工学の第一人者、村上和雄先生は、この目に見えない大自然の大きな働きの何がしかの存在を認め、「サムシンググレート」と呼んでいます。このサムシンググレートを私たちは「神」と呼んできました。
神の存在を認め、神を畏れ、崇め感謝するのは人間だけです。
私たちに災害をもたらすのか、恵みを与えてくれるのか、神は実に気まぐれです。

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■(無題) [10月27日(日)]

高校を卒業して直ぐ東京に修業に出たが、国訛りのズーズー弁がコンプレックスであった。同僚の熊本出身の友人が全く臆することなくお国言葉を喋っていたが私はダメだった。今はどこに行ってもズーズー弁で通しているが、当時は田舎者に見られたくない一心で無理矢理、共通語を喋っていた。
国訛りはその地方が育てた文化である。何も恥じることはない。恥ずべきは、先祖が長年培ってきた文化や固有の風習を否定すること。これまでの自分の存在をも否定するようなものである。NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」。主人公が堂々と北三陸の方言を喋っているのを見て驚いた。方言を売りにしている。「じぇじぇ!」流行語にまでしてしまったではないか。
夏の甲子園で東北勢が大活躍した。派手さはないが、最後まで諦めない東北勢の粘り強さは屈指であった。もはやそこには東北であることに対するコンプレックスのかけらもない。「後世畏るべし」である。
今、旅の番組やグルメ情報等、東北は脚光を浴びているが、必ずしも震災以降の同情からのそれではない。実力があってのこと。特に山形は米、蕎麦、酒、牛肉、果物、野菜、山菜、菓子...何をとっても美味しいものばかりだ。特有の気候風土が下支えしている事を忘れてはなるまい。
四季があり、田園風景の美しい東北にあって、悔やんでも悔やみ切れないのが福島原発事故である。今の科学では償おうにも償う術がない。これから何十年、負の遺産を背負ってしまった。私たちの世代は先祖にも子孫にも頭が上らない。



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■職人魂 [5月14日(火)]

カステラを焼くたび、先人の知恵に感心させられる。オーブンで焼いている途中に生地をかき混ぜる「泡切り」という荒っぽい工程がある。一歩間違えばカステラの表面が凹んでしまい、商品にならない。しかし、「泡切り」をすることにより、カステラのきめが細かく均一な浮きを得ることができる。
カステラは室町時代、ポルトガルより渡来したものだが、今のカステラとは程遠く、日本の職人により改良に改良を重ね、今のような日本流のカステラに出来上がった。そこに日本人の職人魂を垣間見ることが出来る。
カステラに限らず、あらゆるところに先人の知恵があり、感服させられる。こういった製菓技術はわれわれ後進に受け継がれ、現代にも全く色褪せることなく生きている。有り難いことである。
日本の職人技のルーツは伊勢神宮の二十年に一度の式年遷宮だと思っている。千二百年以上も前から古式のまま同じ社殿を立て替え、大神様に新しい神殿へお遷りを仰ぐ日本最大のお祭りだ。二十年の間隔は技術の伝承を考えてのことだろう。この、世界に比類のない日本の伝統文化こそ職人の原点であろう。今年はその二十年に一度の式年遷宮の年である。

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■正義と慈悲 [8月13日(月)]

長年、当店が無料で配布している「ニューモラル」という小冊子があります。
もう500号を越えた、40年以上前からの月刊誌です。先日、創刊号が本棚から出てきたので、懐かしさと共に読み返しました。タイトルは「正義が勝つとは限らない」。
普通、正義が悪を正すことは常識なのに、正義が勝つとは限らないなんて、これが道徳の冊子?と疑いたくなりました。しかし、読むにつれて自分のことを言われているようです。
正義とは本来、道徳的な要素をもったもの。幸せを守り、持続発展させるためのものです。しかし、正義感が強すぎると、どうしても周囲の人を責めてしまいがち。正義を振りかざせば人間関係がギスギスします。水清ければ魚棲まず、です。世界各地で起きている紛争や戦争も正義と正義のぶつかり合い。自分が思っている正義の物差しは、他の人から見れば正義でも何でもなく、逆に反感を買っている場合のほうが多いのかもしれません。
かと言って、慈悲ばかりでは世の中の秩序やルール、規律が甘くなり、発展性がなくなります。
正義と慈悲とのバランス、周囲との関係をよく見ながら、みんなが良くなる方法を探った生き方をしたいものです。

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■顔 [4月13日(金)]

若かりし頃、アランドロンやチャールズブロンソンが眉間に縦皺をたてて、渋い表情を作っている姿に憧れていました。深い悩みや苦しみにじっと耐えている姿に男らしさを見いだし、カッコいいと思っていたのです。
しかしこの頃は人相と心遣いに因果関係があることに気づきました。昔から四十歳過ぎたら自分の顔に責任を持て、と言われるように、顔付きは自分の意思でいかようにも変わります。顔は心の窓。心が丸ければ穏やかな顔になり、心が荒めば荒んだ顔付きになります。昔は、少し陰のある生き方を良しとしたこともありましたが、歳を重ねるうちに必ずしもカッコいいとは思わなくなりました。むしろ穏やかで笑顔の絶えない顔つきのほうが周りに安らぎを与え、私も安心します。
友人で眉間に深い縦皺を作っている人がいます。長年、営業本部長の要職にあって苦労してきたので、しかたないのでしょうが、それを諭すと、彼はその日から心遣いを改めようと努力してくれました。縦皺を早く無くそうとセロテープを貼って伸ばしたりしていますが、最近は心遣いの改善と同時に少しづつ皺が目立たなくなってきたように思います。

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■俳句雑感 [4月10日(火)]

枕木の一本づつの春茜
水野 要
電車が走る度、枕木の一本一本の、鼓動のような響きを乗客に伝える。懐かしい人に逢いに行く時の胸の高鳴りのようだ。
歳時記では春の夕焼けの副題にある春茜。柔らかな夕焼けである。心をほぐす暖かさがあり、色彩からうける光は懐かしい思い出そのものである。
実にいい季節を迎えた。どこか遠くに旅に出ようか。読みかけの本を道連れにして.

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■買い物難民 [3月4日(金)]

最近は高齢化がすすみ、お菓子を買いに来たくても、買いにこれない「買い物難民」が増えています。当店には配達をしてくれるようにと、毎日のように電話がかかってきます。
もちろん、配達の要望には喜んで応じていますが、これからは、そんな人たちの声を聞きながら、本格的に配達にも応じようと思います。まだシステム化していないので宣伝はしておりませんが、山形市内の配達であれば、無料で応じようと決めています。
最近はガソリンも高騰し、それなりの経費もかかりますが、当店の菓子を食べたがっている人たちを救済することにもなります。
もしかしてこれは新たなビジネスチャンスなのかもしれません。支店を出すよりは遥かにリスクの少ないものとなりそうです。
課題は、わざわざ御来店いただいたお客様と、配達希望のお客様をどのように公平に扱うか。よく研究してみようと思っています。

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■名前 [2月15日(火)]

小生は、本名「戸田正宏」の他に幾つかの名前を持っている。
雅号であったり俳号であったり、寺院から頂いたものや活け花で頂いたもの、遊びで付けたもの、様々である。
若い頃に父から名前の画数が悪いので「昌宏」と改名するように言われたのが、本名に固執しなくなったそもそもの原因であろう。昌宏では元のイメージが違いすぎるので「征宏」と名乗り、暫らく使用していた。俳句を志した時も、征宏(せいこう)と名乗っていた。
以後、陶芸の世界では「碧遊(へきゆう)」と名乗り、最近まで陶器作りに没頭。
次に改名したのは、小生の俳句の師匠、中島佐渡が脳梗塞で再起不能となったのをきっかけに「種田新樹」で投句を始めた。
他方、地元での投句の際には「水野要」で活動している。このたびの句集「新樹光」は、水野要で出版。
俳号にはそれぞれ名前にまつわる小生の句がある。「一粒の寺の種より新樹光」
「施餓鬼会や水の要に杭を打つ」いずれも中島佐渡に誉めてもらった句である。
最近、もう一つの趣味として「活け花」があるが、もう直ぐ看板授与の腕前となる。「草宏」との名前を頂いたが、今ひとつ気に入らないので改名を検討している。
もう卒業させてもらったがかつては、遊びの世界である小唄の会に入っていた。そこでも夫々が小粋な名前を付けていた。呉服屋の若旦那は「縮緬屋〇〇」、看板屋は「色文字屋〇〇」、洋菓子店の親父さんは「洋生屋〇〇」てな具合に思い思いの名前を付けて遊んでいた。小生は「久助屋正道」。由来はというと、「久助」は業界の隠語で「クズ」のこと。高木久助堂という店が有名な葛屋であることから、お菓子の出来損ないや切れ端のことを何時しか「久助」と言うようになった。遊びの世界である。出来損ないの菓子屋、とへりくだって名乗ったのである。
小生は今、浄土宗の念仏信仰に傾倒している。先日、菩提寺で「五重相伝」の行事があり、5日間、寺に籠って念仏の奥儀を伝授された。仏門に加わり、新たな世界に踏み込んだが、そこで法名(譽号)を頂いた。「游譽」(ゆうよ)である。これは大変気に入っている。
南無阿弥陀仏

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■継続は力 [2月1日(火)]

三十三歳の時に友人から誘われて俳句を始めた。初めは全く興味なく、柄でもないと辞退したのだが、何度か誘われるうちに断りきれなくなってしまい、軽い気持ちで俳句を作り、句会に出掛けた。ところが、句会でいきなり私の句が特選に取り上げられてしまったのだ。むろん才能などありはしないのだが、いっぺんで俳句の虜になってしまった。(あれは陰謀であったのかも知れない)
以来二十五年、何度か挫折を繰り返しながらもコツコツと作句をしてきた。昨年は念願の句集「新樹光」を出版したが、当初は私が句集を出版しようとは夢にも思わないことであった。
イエローハットの相談役、鍵山秀三郎さんの言葉「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年歴史なる」は、継続することの大切さを言い表そうとしたのであろう。私の事例からもわかるとおり才能とは全く関係なく、継続こそが物事を成就する唯一の方法であると実感している。
これがもし、善い事の継続ならば、どんなにか品性の向上に役立つことかと思わずにいられない。事実、私の知り合いの経営者は箒と塵取を持って駅周辺を毎朝掃除している。もう何年も継続していると聞く。その他にも隠匿を積んでいる経営者を何人も知っているが、みな会社の経営も社長の人格も一流である。
しかし、哀しいかな、凡人はよい事がよいと判って実行できない、悪いことは悪いと判って止められないものである。道徳の実行には勇気が必要なのだ。
一つのことをやり遂げようと決意することを「志」という。志を胸に秘め、勇気をふり絞って実行あるのみ。充実した1年となるように努力をします。

[134]

■ツキを呼ぶ魔法の言葉 [10月31日(日)]

先日、経営の勉強会で、五日市剛氏の講演がありました。きっと皆様の今後の生き方に影響を与えると思いますので、講演の内容をかいつまんで御紹介しましょう。題して「ツキを呼ぶ魔法の言葉」それは
「失敗した時や、落ち込んだ時、病気や怪我をした時でも『有難う』と、声に出して言ってごらん。もちろんよい事が起きても『有難う、感謝します』と声に出して言うのです。」
ただそれだけなんです。それだけのことを実行するだけで、どんどんツキが良くなってきます。
この話しを聞いてからまもなく、町内会の資源回収をしている最中に、右手をスズメバチに刺されました。もう痛いのなんの、右手全体がパンパンに腫れ上がって一日中大変な思いをしました。でも、こんな状況の中「有難う!」と、ちゃんと言えたのです。翌日、あんなに腫れ上がった手が嘘のように治まりびっくりです。
この一件、冷静になって考えました。小生、つくづく運が良いと思えたのです。蜂に刺されなければもっと運が良いだろうとお思いでしょう。実は、お彼岸の疲れが溜まっていて、お陰で一日ゆっくり休めたのです。蜂に刺されなかったら、仕事です。それに、手ではなく頭や首を刺されなくて本当に運が良かったと思っています。
時々、早朝に散歩をしています。先日、盃山に登ろうと挑戦しました。難なく登頂に成功したのですが、問題は下りです。左膝に古傷を持っていたのです。案の定、左膝に激痛が走り、ヤバイ!と思いましたが、魔法の言葉「ありがとう」と、膝に言い続けたところ、不思議や不思議、あの激痛が治まったのです。
「ツキを呼ぶ魔法の言葉」の威力は大したものです。売上げが悪い日だって、物事が思うようにいかない時も、もちろんよい事が起きても、今ではお題目のように「有難う、感謝します!」と、日に何度も言い続けています。きっとこれから益々ツキが良くなり、運命が良くなると確信しています。

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■草取り [9月12日(日)]

先日、農商工連携推進事業の一環として当店が契約栽培をしている「みさおちゃんファーム」の小豆畑の草取りをしてきました。
時折小雨の降るあいにくの天候の中、汗と雨で全身ずぶ濡れになっての作業となりました。今年は猛暑続きですので、晴れたら晴れたで、さぞや大変な作業だろうと思いながら農作業を体験したのです。
グルメブームの今日、無農薬や国産志向が一段と強くなっています。しかし、外国産でも良いものは良いですし、国産がすべて無農薬ではありません。無農薬の作物を作るとなると、草取りや病害虫の対策に大変な苦労が要ります。
無農薬が良いことは誰でも知っています。しかし、徒に無農薬栽培にこだわってしまうと農家の負担や、作物の出来にも影響します。
果して、無農薬栽培だからといって虫食いや見栄えの悪い農作物を、しかも割高な値段でどれだけの人たちが理解して買ってくれるだろうか。
農作物自給率40%の日本において、安全な作物を作るのはもちろんのこと、もっと効率の良い作業を目指し、農家の収入を増やさなければ後継者は益々農業を離れ、将来の日本の農業は壊滅状態になってしまいます。
就職難の現在、若者に就農を働きかけるにはどうすればよいのだろうか、などと専門分野外のことを考えながら、草取りに汗をかいたのです。

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■おめざフェア [8月15日(日)]

毎年お盆が過ぎると仙台藤崎百貨店で「おめざフェア」が始まる。
当店も2年前から出店しているが、相変わらず人気の催事である。
当店は歌舞伎役者の坂東三津五郎氏から紹介され、出店の権利を得た。
坂東三津五郎氏が山形の花柳界に指導に来た時、地元の名取りの先生が当店の「ティラミス大福」を薦めてくれたらしい。
TBSはなまるマーケットで紹介された時、全国の坂東三津五郎ファンからお問い合わせがあり、さすがに人気歌舞伎役者さんだと驚いた。
その人気にあやかり、今年も藤崎百貨店に出店します。
期間は8月19日(木)〜30日(月)のロングランです。
仙台の皆様、どうぞ宜しくお願いします。

[131]

■猛暑 [7月23日(金)]

今年は、梅雨が明けたと思いきや、猛暑続きである。
昨日、初物のスイカを御馳走になったが、この天候でとても美味しいスイカであった。
スイカが美味しい年は、お菓子が売れない年である。
当店もかなり苦戦を強いられている。
毎日、恨めしい顔つきで、ぎらぎら照りつける空を眺めている。
身も心も、財政も限界に近づいている。
ああっ、神様…

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■消費行動 [7月6日(火)]

先輩のあるお店やさんの話である。
先輩の店は、山形県内の地方都市にあり、観光資源である果樹園が点在している立地にある。
ちょうど今頃は、さくらんぼ観光客を相手の商売となり、 日曜日ともなれば、大型バスが何台も訪れ、さくらんぼ園の帰りに立ち寄るお客様がひっきりなしにやってくる。
店の中はお客さんで溢れ入りきれない状況があるくらいというから凄い来客数である。
普通、このくらいの客数なら、当然売上げも凄いだろうと思いきや、平年の売上げの半分ほどと、店主が嘆いていた。

山形市の中心商店街の一角に、堰を利用した新しい商業施設がオープンした。
地盤沈下の甚だしいこの商店街にあって、テナントに入居しているお茶屋さんが、このゴールデンウイークに、抹茶ソフトクリームを日に100万円も売ったそうだ。

この二店舗を比べて思うことは、人の集まるところでの、売るべき商品が明確になってきたということだろう。
抹茶ソフトは単に衝動買いである。本当に食べたくて、あるいは目的買いとして、美味しいものを求めて買うわけではないということ。
片や、先輩の店に並んでいる商品はコンセプトが明確で、しっかりした商品群である。不断は目的買いのお客さん相手である。店舗が目指すものと、お客が求めているものとの違いの、よき見本を見せ付けられたのである。

果して、当店はどうなのであろうか。お客が求める商品が、わかり易い状態できちんと置いてあるのか些か不安になる。
しかし、当店のような目的買いのお客様相手には、周りに振り回されることなく、これまでどおり、「自分が客ならどうか」といった自分がお客さんの目線となって客観視する心の余裕を持つことが、最も大切なことであると気づかされた出来事だった。

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■創業祭 [6月27日(日)]

創業祭の売り出しを終えました。
結果は惨憺たるものでした。
理由は色々あります。
売り出し期間中、かなり蒸し暑く、お菓子を食べる気がしなかった。
景気がかなり悪い。
選挙期間中は商売が静か。
広告チラシにインパクトがない。等々
しかし、売れない理由を他者のせいにするのは最も慎む行為です。
商売は本末で言えば末。本は私の品性向上と、自分に言い聞かせているはずですが、売上げによって私の心は大きく左右されてしまうようです。そんな単純な心の、つまらぬ人間のようです。
反省すべきは、売上げではなく、弱い自分の心のようです。

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■輸誠同窓会 [4月11日(日)]

気たる6月18日(金)、母校の山形市立商業高等学校の輸誠同窓会が開催されます。
今年は我が学年が幹事の学年。会場を埋め尽くすよう、沢山チケットを販売するようにとの命を受けました。
現役をリタイヤし悠々自適の人、まだまだ頑張って仕事をしている人、孫の面倒を見ていたり、親の介護を頑張っている人など、年に一回、同窓生が一堂に集まり近況報告を兼ねて酒を酌み交わすのはとても意義のあることだと思っています。
山商出身で参加してみたい人は御一報ください。チケットを手配いたします。

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■景気対策 [4月10日(土)]

私の仲間は、サラリーマンよりも自分で商売をしている人の方が圧倒的に多い。
その仲間内で、最近の景気の落ち込みが著しいと嘆く人たちが沢山出始めました。
私の店は元々売れないところからスタートしたので、売れないのが当たり前、と思って商売をしています。
先のバブル経済の時もさっぱりいい思いをしませんでした。その代わり、バブルが弾けてしまってもさほど影響がありませんでした。
むしろ、苦しんでいる経営者を励ましてあげたいという気持ちで開発した商品「景気好転まんじゅう」がヒットしました。
景気が悪くなると売れる商品、を作ったおかげで売上げの落ち込みがなくてすんでいます。
私たち商人は、売れないことを政治や景気のせいにしたり、大型店進出のせいにしていないだろうか。売れないと嘆く前に、店内外を掃除したり、整理整頓して買いやすい雰囲気を作る努力をするほうがより大切だと思います。
どうせ売れないからと諦めるのは最も悪いことです。

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■売る苦しみ [4月9日(金)]

昨日から岩手県盛岡市の百貨店「川徳」にて「おめざフェア」に出店しています。
二年目ということもあり、チラシの扱いも小さくなり、かなり苦戦している。
そういえば昨年の仙台藤崎に出店したときも同じ状況でした。
山形で販売していれば、売る苦しみはそんなに感じないのですが、知名度ゼロ、強力な競合店も多く出店しており、非常に参考になります。何もしなければ「お客様は買わない」のが常識となりました。
ここで揉まれ、販売の智恵を身に付ければ人間性の向上にも役立つのではないかと思います。
地元では、本当にお陰様なのですが、信用度も高く、良いお客に恵まれ、順調な売上げです。
日々の努力の積み重ねが如何に大事かを身にしみて感じた出店です。

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■平成生まれ [3月31日(水)]

当店に4月1日付で高卒者が入社しました。平成生まれです。
実は、昨年11月にも一人入社した人も平成元年生まれでした。
この二人を見ていると、実に真面目で、職業観もしっかりしていることに気が付きました。
恐らくは就職氷河期で、学校の進路指導室の担当者の苦労を、学校全体の問題意識でとして、働くことの意義を子ども達に植え付けてくれたのだと思います。
ひところ、働く者の権利ばかり強調されましたが、その背景には欧米思想である「労働は苦役」と洗脳されてしまった結果だと思います。
日本の職業観として、二宮尊徳の思想「勤労は美徳」の方が絶対に日本に合ったものです。
狭い島国で、資源も乏しい日本の進むべきは、大きな努力で小さな成果に甘んじ、勤労の喜びと同時に、清貧でも心豊かに、謙虚に生活したいものだと思います。

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■新年会 [1月14日(木)]

もうこれで何度目の新年会であろうか。
一昨日もまた、東京の品川プリンスホテルで、日本菓業振興会の新年会に参加してきました。
田舎の菓子屋が東京近辺の優秀な技術者と交流を持つのは誠に意義のあることだと思っています。
そしてまた、新たなる未知の人間関係を築くため、今年何度目かの新年会に参加するのである。

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■白小豆 [1月7日(木)]

いよいよ、白小豆と紅大納言小豆の農商工連携事業の認定に向けてスタートです。
仙台にある中小企業基盤整備機構の会議室において説明会があり、プレゼンテーションをしてきました。
この事業は私の長年の夢であった、和菓子の原材料の最も大切な「小豆」を地元で調達しよう、というものです。
私一人の力ではどうにもならないので、地域活性化の支援事業制度を活用することになったのです。
農商工連携事業に認定されれば、行政の全面的なバックアップが期待できます。
何よりも、山形ブランドの「小豆」が確立され、山形の菓子屋のレベルアップに寄与できます。

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■くじけそうです [1月6日(水)]

新年の決意もどこへ行ったやら、女房に対する態度が横柄です。
女房以外の他の人には許せる事も、女房には完璧を求めすぎるのでしょう、ちょっとした事でも責める気持ちになってしまいます。
「母ちゃん、ごめんなさい!」119

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■テレビ出演 [9月5日(土)]

地元の放送局、TUY テレビユー山形の人気番組「どよまん」の「くいだおれ駅伝」に当店の人気商品「生どら」が出演します。
先日収録が無事終わりました。
その他、秋の商品も紹介されますので、是非ご覧ください!
放送は 9月12日(土)午後4時54分ころです。
当然、私と三代目戸田健志も友情出演しています。お楽しみに!!

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■他人の欠点 [7月25日(土)]

モラロジーには多くの格言が有ります。
その格言の中に「他人の欠点我これを補充す」というのがあります。この格言に出会ったとき、私はとても驚き、この格言の前に平伏してしまいました。
普通、他人の欠点が目に付いたら、ほとんどの人はその欠点を暴き、非難攻撃をするか、陰口をするところでしょう。
しかし、この格言は、他人の欠点をそっと補ってあげよう、というものです。
もし、一瞬でもこの心になったのなら、たちまち効力を発揮し、相手を非難や攻撃の対象から外れ、人間関係を損なわずに済みます。
人は誰でも欠点や短所はあるものです。皆が「他人の欠点我これを補充す」という精神なら、この世の中は本当に過ごしやすいものになるはずです。

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■最高道徳 [7月10日(金)]

私は今、千葉県柏市にある(財)モラロジー研究所の主催する講座を受講中です。
モラロジーとは、モラル(道徳)とロジー(学問)の造語で、道徳科学を意味しています。
従来の道徳では、何となく損をしたような気になり、好んで道徳を実行しようと思う人は稀です。
それに対し、モラロジーの意味する道徳は「最高道徳」と言い、端的にいえば、最高道徳を実行すれば「品性」ができ、品性の分量と比例し、幸福の分量が増える、との教えです。
商売に当てはめても同様で、お店の品性を向上させれば自ずと人が集まり、求めずとも商売がよくなる、とのことです。
私は、そんなうまい話があるわけないだろうと疑ってかかりましたが、この講座の受講が進むにつれて、私の疑念が晴れてきます。
私は今まで多くの勉強会に参加し、自己啓発に努めてきましたが、今のところ、このモラロジーをおいて他にもっと優れた勉強法はないと、思っています。

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■献菓祭 [6月22日(月)]

日頃の商売の繁栄と安全を感謝し、更なる発展を祈願する菓子屋の祭事「献菓祭」が羽黒山神社にて執り行われました。
各店一同に会し、自慢の菓子を献上する祭りは見事です。特に今年度は献菓祭創設50年の節目の年。加えて出羽三山丑年ご縁年であり、総勢60名を越す参加者でした。
当店は、50年間二代にわたり、1度も不参加の年がなく皆出席です。
神様のまつりごとは、人間の都合によって変えるべきではないと教わりました。よって優先順位1番です。神仏を畏れ崇めるのは日本のよき伝統文化です。

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■親ばか [6月6日(土)]

通販大手で、非常にグレードの高い「ジャルックス」という会社を御存知だろうか。
そのジャルックスの通販カタログのお中元特集号に、当店三代目、戸田健志の作った商品が掲載された。それも表紙を飾り、トップ記事扱いである。
親バカながら、息子も世間から認められるようになったものよと、ちょっと自慢したくなったので御紹介申し上げる次第。
以下にURLを記しておきますので、興味のある方は一度ご覧ください。ジャルックスさんとの共同開発となっていますので、欲しい方はジャルックス経由でご注文ください。http://www.shop.jal.co.jp/01/sp/kdw_wagashi.html
菓子に対する基本姿勢「磯部理念」は私が監修しましたので、御安心ください。

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■第一回「連結器賞」受賞を喜ぶ [5月25日(月)]

このたび、栄えある第一回「連結器賞」(俳句の結社賞)を頂きました。
縁があり、「人」誌に投句したのが俳句の始めです。山形に進藤一考主宰をお招きしての句会でいきなり特選を頂き、すっかり俳句の虜になりました。しかし悲しいかな、浅学非才の身ゆえ、だんだんと俳句が苦痛になり、とうとう頓挫をしてしまいました。
その後一考先生の死去にともない、「人」誌の分裂騒ぎに巻き込まれます。中島佐渡先生が主宰となり、新たに「朔」誌を立ち上げた折、頭数合わせのためにと担ぎ出されました。佐渡先生は一考先生ほどカリスマ性はありませんが、句作りが丁寧で緻密、理にかなった指導をしてくれます。実は、「人」在籍中、佐渡先生に少しだけ俳句の指導を受けた事があります。しかし、先生に見て貰うと殆どが句屑となり、私の実力では先生に付いていくことが出来ません。
このたびも、付いていけるのか心配しましたが、以前と違い懇切丁寧な指導をいただき、力を付けさせていただいたような気がします。残念ながら、「朔」誌百号を目前にして佐渡先生は病に倒れてしまいましたが、間髪をいれずに陣田泰治先生が「連結器」を立ち上げ、佐渡先生の意志を立派に引き継いでくれたのは望外の喜びでした。
新しい主宰の下、新たな気持ちで望んだ投句。結社賞があるのも知らずにいましたが、突然の受賞の知らせを受け、驚きと同時に無上の喜びで一杯です。
今後の「連結器」は陣田泰治主宰の俳句観がより鮮明になってくると思います。主宰が何を考え、どのような方向付けをするのか見極めつつ俳句を楽しみたいと思います。


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■商品開発 [5月24日(日)]

NHKの朝の連続テレビ小説で、またもや和菓子屋が舞台のドラマが始まりました。我々菓子屋にとって、これほど有難い事はありません。
小学生に将来なりたい職業を聞くと、必ず菓子屋が上位を占めます。
有難い事ですが、菓子屋は見た目よりはるかにキツイ仕事です。力仕事も多く、朝は早いし、夜も注文が入れば終わるまで拘束されます。
しかし、魔法のように無から有を作り、しかもそれが美味ならば大勢の人たちに支持されるのは必然の事です。
その陰には、たゆまぬ新商品開発や、技術の研鑽を積んでいます。全く新しい菓子などは出尽くされてしまい、簡単には出ないと思いますが、今ある菓子を見直し、さらに磨きをかけるのも商品の開発となります。
私たちの使命は、菓子を通して潤いのある社会のお手伝いをすること、心を和ませる事が出来れば嬉しいです。

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■日本人の感性 [5月23日(土)]

百花も咲き終わり、新緑の季節。山形の夏が一気に訪れました。
一月も前の事ですが、友人と一緒に霞城公園の夜桜を観賞してきました。
ライトアップされた桜は荘厳で、圧倒されました。桜は日本人の心を魅了してやみません。さて、この感情はどこから来るのだろうか。恐らく日本人としてのDNAに組み込まれた独特の「感性」だと思います。
蝉や虫の音も、日本人なら風情を感じますが、西洋の人々はただのノイズ(雑音)にしか聞こえないとの事です。
侘び寂び、俳諧といった伝統文化が日本人の心に、まだまだ沢山残っています。培われたこの感性を大切にし、後世に伝えていかねばと思いつつ霞城公園を後にしました。

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■不易流行 [2月10日(火)]

バレンタインデーの商品開発をしている。
「和風トリュフ」や「ハートの生どら」。どれも和菓子職人としては、邪道といわれそうだ。
和風トリュフは5種類。黒豆をチョコレートで寄せたり、ミルク餡をセンターにホワイトチョコでコーティングしたり、黒糖餡をトリュフにしたり、黄な粉を使ったり、のし梅をチョコレートでコーティングしたりと、かなり力を入れて作っている。どら焼きもまた、ハート型に焼き、フィーリングをショコラクリームやいちごクリームにして、すでに商品化として販売している。
不思議な事にお客様は何の抵抗もなく買ってくれる。
なんでもありの菓子業界にあって、邪道と思う心そのものが邪道となってしまったのかも知れない。
松尾芭蕉が「不易流行」を説いて久しい。テンポの早い現代、何が不易で何が流行なのか、しっかり見極め、お客様のニーズに答えようと思っている。

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■累代教育 [1月16日(金)]

(財)モラロジー研究所主催の道徳科学論文、概説講座を三代目の息子が受講中です。
5泊6日の研修棟で合宿制の講座です。
沢山の勉強会を見てきた中で、モラロジー道徳科学の勉強が今のところ私にとって最良の勉強です。
私と同じ勉強を跡継ぎが本格的に勉強してくれるのですから、親として、また社長としてこんな嬉しい事はありません。
同じ社会のくくりの中で、考えを同じにするのですから、力が3倍にも5倍にも働く事と思います。いわゆるベクトルを合わせるということでしょう。

モラロジーとは、モラル(道徳)とロジー(学問)の造語です。
今から80年以上前に法学博士の廣池千九郎が、人類の永遠の幸福実現のため、身を投げ出して研究をし、書き上げたのが「道徳科学の論文」です。
同じような境遇の人が同じ心遣いで同じ行いをしたら、結果が同じである、という一定の法則を発見し、心遣いと行いを最高道徳的に改めれば誰でも幸せになれる、といった学問です。

初めは、そんなうまい話あるものかと疑いつつも薦められるままに勉強を始めましたが、今ではその疑心暗鬼がすっかり取れて、確信となりました。
さらに、この学問は、親から子へ、子から孫へ受け継ぐことにより、一層の力を発揮します。
我が息子もモラロジーの原理をどれほど信じてくれているかわかりませんが、将来きっとこの学問を勉強してよかったと思うに違いありません


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■あけましておめでとうございます [1月3日(土)]

皆様、あけましておめでとうございます。
昨年は米国の金融不安に端を発し、世界同時不況の容貌を呈してきました。
また、相も変わらず食品の偽装が後を絶たない年でもありました。
マスコミも大げさに騒ぎを煽り立てるものですから、お客様も何を信じて選べばよいのやら、混迷を深めるばかりです。
昨年の世相を表す漢字は「変」でした。しかし、食品製造に携わる者の信念やモラルは「変」ではなく、いつの世も「不変」でなくてはならないと思います。
さて、私の今年の努力目標は「笑顔」です。
この世の中、笑ってばかりいられないのですが、仏頂面をしたとて何も良くなりません。むしろ回りに不快感を与えるばかりです。
表面だけではなく、心から笑顔を作ることが出来るよう努力したいと思います。
いつでも自然な笑顔で人と接していけるよう、頑張ります。
何はともあれ、今年も皆様にとってよき一年でありますよう、お祈り申し上げます。合掌

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■裏メニュー [12月19日(金)]

裏メニューとして、毎年クリスマスケーキを作っています。完全予約制で、毎年固定客がおり、300個ほど作っています。
最近特に人気があるのは、なんと、バタークリームのケーキ。
かれこれ10年位前から、バターを変えてから人気が出始めました。
バターの秘密は「発酵バター」
発酵バターには前発酵と、後発酵があり、当店のバターは前発酵です。
バターに詳しい人に聞けば、前発酵バターが如何に貴重で美味かわかるはず。
いずれにしても裏メニューであり、完全予約制の商品です。
静かに売れて欲しい商品です。

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■夫婦円満 [12月18日(木)]

今年の夏、4夫婦8名で伊勢神宮を参拝した。
その反省会と称し、同じメンバーの忘年会が昨夜行われた。
最近夫婦単位で出かける機会が増えた。
意識して夫婦で出かけていることにしている。
美味しいものを分かち合い、楽しい時間を共有することを大切にしている。
若い時分には考えられなかった事だ。
夫婦が仲良く見えるということが妙に照れ臭かったのだろう。
しかし、歳と共に女房の有難さが身にしみてくるものだ。
一緒に仕事をしていると、余りにも身近なため、気づきにくいが、「内助の功」の功績は大きい。
一般に言えることは、夫婦仲の良いところは家庭も仕事も順調である。101

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■自句自解 [10月10日(金)]

首桶にいざよう月の絡みけり

吟行句の一。
奥州平泉、中尊寺に行った事のある人は、誰でも藤原三代の栄華に驚かされる。
国宝、金色堂は初代藤原清衡の造営で、平安後期の阿弥陀堂建築物。堂内には阿弥陀如来を中心に十一体の仏像が安置され、堂の内外はすべて漆に金箔を押し、柱や須弥壇には金銀珠玉や螺鈿が施してある。
藤原氏は父子三代に亘って仏教による平和な理想郷を建設した。しかし薄幸の武将、源義経が兄頼朝に追われ、平泉に落ちてくると、四代泰衡は鎌倉の圧力に耐えかね、義経を自害に追い込み、自らも頼朝の大軍に攻められ、平泉は滅んでしまった。中尊寺の須弥壇には初代清衡、二代基衡、三代秀衡のご遺体、そして四代泰衡の首級が納められている。
掲句は四代泰衡に思いを馳せ、泰衡に代わって無念さを詠んだ句。「いざよう月(十六夜)」は満つれば欠ける物事の象徴である。十六夜と泰衡の魂を絡ませ、永久の理想郷を守られなかった無念さを表現した。金色堂の宝物殿「賛衡館」に泰衡の首桶が展示されている。確かな無念さを今に伝えているのである。99

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■(無題) [5月8日(木)]

高校2年の最後の子供が所属している吹奏楽部の顧問の先生が人事異動のため転勤する事になった。生徒はもちろん、父兄の皆も、先生の熱意や人柄に敬服していたのでショックを隠せない様子である。
その先生は化学の教科を受け持っている。授業は非常に面白く、化学が好きになった生徒をたくさん作ったが、部活の吹奏楽となると人が変わったように厳しくなり、部員を前に容赦なく罵声を浴びせたりもする。しかし、部員との絆は深く、誰一人落伍する者もいない。また、先生はひとりで何でもかんでも仕事を引き受けてしまい、始終忙しく走り回っている。マメなのである。父兄の評判もよく、皆から慕われている存在であった。
父母の会で、早速先生の送別会をやろうという事になった。急な話なのでどれくらい集まってくれるか心配していたが、予想をはるかに上回る父兄がお別れに来てくださった。
男子校なので、吹奏楽の未経験者が多く、もちろん楽器をいじるのも初めてという生徒も多いが、コンクールでは毎年、ちゃんと金賞を取るくらいに実力を付けてくる。そのご苦労たるや大変なものがあると思う。しかし、技術の向上ばかりでなく、先生は部活を通じて人間育成にも力を注いでくださった。合宿のときなどは勉強道具を持たせ、勉強時間も割いてくれる。学校の基本方針「文部両道」をわきまえた先生のご指導である。
先生は今年小学校に入学する女のお子さんがいるが、部活に忙しくほとんど遊んでやる暇がないという。なんとも頭の下がる思いである。
よき恩師に恵まれ、子どもは幸運である。

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■創業60年を記念して [3月15日(土)]

今年は当店の創業60年の記念の年である。60年といえば人間にとって還暦。年が一巡し、赤子に還る年である。当店も、もう一度原点に返り、第二の創業のつもりで60年を迎えようと思っている。その節目に当店の生き様をDVDビデオに収録、製作した。その原稿があるので御紹介したいと思う。

戸田屋正道創立60周年記念DVD製作原稿

『終戦直後、足りないものばかりの両親の新婚生活。不安と希望が交錯する梅雨空のなか、実家から譲り受けた赤鍋ひとつ。闇市で仕入れたもち米を水飴に加工したのが当店の始まりと聞いています。
「信用第一」先代が口癖のように私に言い聞かせてきた言葉です。苦労に苦労を重ねて、今日の基礎を築き上げた先代の重みのある言葉です。これまでの幾多の苦難を、お客様はじめ、多くの人から励まされ、助けられ、支えられながら乗り越えてきた喜びと、感謝の心も同時に伝わってきます。
そんな先代の心を受け継ぎ、守るため、当店では、食のスペシャリスト、磯部晶策氏の提唱する磯部理念に基づいた菓子づくりをしています。磯部理念とは、
1、 安全で安心して食べられること
2、 ごまかしのないこと
3、 味のよいこと
4、 品質に応じて買いやすい価格であること
の、食品に対する4つの条件を満たし、さらに、
1、 原材料の厳選
2、 加工段階の純正化
3、 固い信念に基づく一徹なメーカーの姿勢
4、 メーカーといえども99%は消費者との立場と自覚
の、食品に携わる人の4つの原則を貫き通すこと。
磯部理念を守ることは、食の多様化や食品添加物の氾濫する昨今において、決して容易なことではありません。当店では、磯部晶策先生を中心とする勉強会「山形さらど事業協同組合」に欠かさず出席し、磯部理念の徹底化を推進しています。
原材料は店主自ら探し回り、確かな目で厳選し、伝統に基づいた技法で手間暇を惜しまず製造しています。和菓子の命とも言うべき餡は、北海道帯広市川西農協で扱っている「きたのおとめ」という品種の小豆を使用し、総て自家製の餡を使用しています。
もち米も山形県河北町谷地の吉田正幸さんと契約栽培した「でわのもち」という品種を使用しています。そのほかの原材料も、磯部先生のご指導の下、最良のものを追求し、決して妥協を許しません。
「菓人・戸田正宏のカステラ」や、「菓人・戸田正宏のどら焼き」は店主の名前を商品名に付けるなど、責任の所在をいっそう明確にしています。
元々洋菓子職人であった当主はその技術を生かし、生クリーム大福、ティラミス大福といった「大福五人囃子」や、和風プリン「和らか」の開発など、ユニークな菓子も誕生させ、幅広い顧客層からご支持をいただいています。
明るい店内は、山形の四季の移ろいを巧みに菓子に表現し、季節感にあふれ、訪れる人を飽きさせません。
また、後を絶たない食品の偽装事件に対し、決して他人事ではないと重く受け止め、社員教育に「モラロジ―道徳科学研究所」の研修を義務付け、社員のモラルの向上に努めています。単なる販売員や菓子職人である前に、よき社会人としての自覚と責任感を培うため、毎日を振り返り、反省の誓いを習慣付けています。
今日一日、明るく穏やかに人と接していただろうか
今日一日、不平不満や人を責める気持ちが起きなかっただろうか
今日一日、両親や恩人に恩を返すつもりで仕事をしただろうか
今日一日、道徳的に生活出来ただろうか
今日一日、精一杯努力し、悔いの残らない日であっただろうか
お客様にはお返し切れないご恩を背負いながらも、感謝の気持ちを忘れぬために、これからも「信用第一」の精神を当店の柱として引き継いで参ります。
願わくば、戸田屋正道がずっとずっと皆様に愛されますように。
合掌
二代目当主 戸田正宏』

ビデオが完成したらホームページでも閲覧できるようにしたいと思っている。


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96]

■年頭の辞 [1月19日(土)]

昨年は食品業界の不祥事続きで大変な1年であった。善悪より損得を優先させる傲慢な経営者の多さに驚かされた1年であった。
謙虚さを忘れないために、私をはじめ、従業員に、仕事が終わったらその日を振り返り、静かに反省をするように習慣づけを行うことにした。
反省の内容は...

今日一日、明るく穏やかに人と接していただろうか
今日一日、不平不満や人を責める気持ちが起きなかっただろうか
今日一日、両親や恩人に恩を返すつもりで仕事をしただろうか
今日一日、道徳的に生活できただろうか
今日一日、精一杯努力し、悔いの残らない日であっただろうか

ロッカーに貼り付け、着替えながら暗誦してもらっている。

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■上品過ぎる? [1月16日(水)]

苦情があった。好転まんじゅうの餡が、いつもと違うらしい。
三代目、健志が帰ってきて8ヶ月、少しづつ修行の成果を見せてもらおうと思い、餡造りを任せたのが原因らしい。修行先で習ってきたとおり、手際よく餡を作ったのは良いが、修行先では餡に水飴や食塩を入れないのである。結果、あっさりしすぎで、風味も薄く、どこか味が抜けたようなものになってしまったようだ。
上生菓子のような、上品な味を求めるのなら、食塩を抜いたほうが断然いい味になるのだろうが、まんじゅうのように餡そのものを楽しんでいただくものにはどうやら不向きなようである。
山形は息子の修行先のような都会ではなく、田舎の風土にあった味がある。しっかりした味付けのほうが好まれるようだ。長年、戸田屋正道で慣れ親しんできたお客様、食塩を抜いただけで味の違いを見抜き、お叱りを受ける。お客様の、なんと舌の肥えた人の多いこと。驚きと共に、嬉しくなってしまった。息子と相談し、まんじゅうの餡を元に戻すことにしたことは言うまでもない。
苦情をお寄せくださいました蒲生様、有難うございます。


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■食品に畏敬の念を持ちましょう [12月2日(日)]

食の信頼性がこれほどまで失墜してしまっているので、食品業に携わっている人間が誤解を受けるような発言は控えたほうが良いのだろうが、先日のマクドナルドの賞味期限切れの野菜サラダや、スライストマトを使用していた報道を見聞し、賞味期限のことをもう一度よくよく考えてみた。そもそも野菜やトマトに賞味期限が存在することに驚かされる。
日常生活上、少しくらいしなびれた野菜やトマトは捨てることなく食する。食べられるか否かは、見た目で常識的に判断できる。マクドナルドは恐らくセントラルキッチンで処理された野菜を出荷するときに社内規定で、賞味期限を画一的に付けるのだろう。しかし、野菜類は生き物である。その日セントラルキッチンに入荷したものが、必ずしも賞味期限を過ぎたからといって、みな腐れてしまうことはない。まだ充分食べられるのに社内規定だからといって廃棄処分になるのは私は耐えられない。そこまでせずとも、現場の人間に判断を委ねることは出来ないものか。
一説によると日本人が残飯として食べ残す量はエネルギー換算で1000万食分、と言われている。一日でです。食料自給率が4割を切ったにも拘わらず、無駄な浪費をしている。
話は少し脱線するが、最近、大食いを競うグルメ番組が横行しているが、それなども食に対する傲慢な振る舞いではないかと心配している。
食品は私たちにとって命綱です。大切な食品をもっと畏敬の念をもって大切に扱わないと、いずれしっぺ返しに遭う日が来ると思っている。
食に対し、感謝の気持ちが薄れてしまっているのが原因ではないのだろうか。

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■赤福失望論 [10月25日(木)]

今度の赤福事件は私にとって失望感でいっぱいである。
赤福餅が冷凍品であったこと位は驚きではないのだが(あの位の規模であれば、繁忙期の製造に限界をきたすので、冷凍をして造り置きするのは致し方ないと思っている)問題は、天下の赤福とあろう者が売れ残りを再利用したということ。もうひとつ、余りマスコミで取り上げられられていないが、原材料表示にごまかしがあったことである。赤福餅の原材料は「もちごめ、砂糖、小豆」のみの表示である。しかし、今回一度だけマスコミに表示義務違反として「糖類(ソルビット)、トレハロース」の表示が抜けていたことが判明した。マスコミが大きく取り上げなかった理由は恐らく、トレハロースのメーカーが、イメージダウンを警戒し、マスコミに圧力をかけたのではないかと疑ってしまう。
何時までも柔らかな餅や艶やかな餡は同業者として不思議に思っていたのであるが、これで謎は解けた。
当店の理念のいちばん重要な「ごまかさないこと」は、改めてよい理念であると思っている。冷凍品であれ、糖類やトレハロースを使用していたにせよ、包み隠さず正直に言えば済むものを、赤福たるものがどうしてごまかす必要があるのか、理解に苦しむ。経営者のおごりと道徳の欠如がここでも露呈した。

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■拝啓 赤福様 [10月22日(月)]

拝啓 赤福様
このたびのあなた様の一連の不祥事、残念で残念でなりません。
小生はあなた様の赤福餅を、同業者として羨望のまなざしで見させていただき、尊敬をしておりました。あなた様の社是でもあり、社名や商品名の由来であります「赤心慶福」は「まごころ(赤心)を尽くそう、そうすることで素直に他人の幸せを喜ぶことが出来る。(慶福)」という思想に感服しておりました。毎月1日の朔餅には早朝からお客様が長蛇の列をお作りになるのも、あなた様が長い年月をかけて作られた社風や企業理念、商品など、みな赤福様が大好きなのでございます。
このたびのことは何かの間違いであってほしいと願っておりますが、いちばん心を痛めているのはご当主の祖母「ます」様でありましょう。戦死なさったご当主に成り代わって戦中戦後の混乱期を乗り越え、のれんを守り抜いた気迫の人でございました。おばあ様は戦時中、一時創業を自主的に停止したそうでございます。「闇市に行けば材料は手に入ったかもしれないが、粗悪な材料で餅を作ったら赤福が赤福でなくなる。わかる人からは、これが赤福かと笑われる。それはご先祖様が笑われるということ」と、言ったそうでございます。そうやって味を落とさずに赤福の品質を守ろうとしたのでございましょう。
赤福様は今年でちょうど創業三百年。老舗のお手本のお店の、その節目の年の不祥事の発覚は、ご先祖様のお灸なのかもしれません。最近の赤福様は経営の多角化とでも申しましょうか、関連企業をたくさんお作りになられております。ご先祖様は規模の拡大を心配しておられるのかもしれません。
これからは、初心に還って「赤心慶福」のお心をもう一度取り戻し、再起に向けて頑張ってくださいますよう衷心よりお祈り申し上げます。
敬具



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■菓人のぼやき [9月24日(月)]

今年はお盆が明けても猛暑が続き、お菓子屋泣かせであった。普通、彼岸に入ると菓子の需要が伸び、一息つくところだが、何せ暑いものだから客足が伸びず、例年よりずいぶん売り上げを落としてしまった。幸いなことに一昨日の夕方、まとまった雨が降り、爽やかな秋分の日を迎えることが出来、ようやくお客様が戻ってきた。
磯辺塾の先輩の言であるが、売れ行きが天候に左右されるということは、まだまだ商品に磨きがかかっていない証拠、と一蹴された。同感である。


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■原料高騰 [9月20日(木)]

菓子の原材料が高騰している。それも、砂糖や小麦粉、卵、バターなど、おもに主原料が高騰しているので、経営を圧迫している状態が続いている。
私はそれでも、他の業種と比較すれば、恵まれた環境にいると思っている。まだまだ経営努力が足りていないと思うからである。他の業種は必死の思いで経費を切り詰め、利益の確保に血眼になっている。
私の周りには多くの無駄がある。人の無駄、材料の無駄、設備の無駄、光熱費の無駄...。経営努力で無駄を改善すれば、原材料の高騰分くらいは楽にカバーできると思っている。
しかし当店で一番の無駄は社長の私なのかもしれない。妻が言うので間違いなさそうだ。


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■内部告発 [8月26日(日)]

食品に対する信頼が揺らいでいる。古くは森永砒素ミルク事件やカネミ油事件、近年では雪印の問題やごく最近ではミートホープ社の偽装、白い恋人で有名な石屋製菓の不祥事。不二家問題が起きてから一年にも満たないのだが、随分古い話になったような錯覚さえ覚える。
森永砒素ミルクやカネミ油は、深刻な健康被害が出たので発覚したが、最近の傾向としては、多くが内部告発による偽装や不祥事の発覚である。
一概には言えないことであるが、食品の性質上、大量生産大量販売には無理が生じるように思う。無理を承知で、安全より利益を優先させると日持ちや流通に便利な添加物に頼ったり、見せかけのよいものにする為にも様々な添加物が入る。また、売らんが為の派手なCMに頼らざるを得ない。それを世間では「企業努力」と片付けてしまう傾向にあるが、果たしてそうも言い切れまい。
法律は、その社会の一員である以上、最低限守らなければならないルールである。どんな悪法でも法律違反は許されない。道徳は、人間が快適に暮らす上で、自ら進んで行なう善事である。法律の上を行く崇高な精神作用と行いである。
食品添加物も、法律で許されているからとみだりに使用するのは、法律を犯していなければ何をしてもよい、と言っているのと同じである。「疑わしきは使用せず」という崇高なモラルがあってもよいとおもう。
企業倫理を問われて久しいが、先の偽装や不祥事は皆、トップの道徳の欠如による。魚は頭から腐るものである。企業である以上、利益は確保されなければならないが、不正してまで儲けなければならない「欲の体質」になっていると言われても反論できないだろう。
食品メーカーに限ったことではないが、創業当初の経営者は皆、それなりの社会的責任や崇高な理念を掲げて会社を立ち上げたに違いない。でなければ大きくなれるはずがない。それがだんだんと弛んでくるのだから不思議。また、現状を憂え、「消費者をだましてはいけない」との思いで内部告発を余儀なくせざるを得ない従業員などは、恐らく一人も居りますまい。みな怨恨による告発。総ては社内の道徳の欠如に起因する。


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■はなまるマーケット [7月12日(木)]

先日、「はなまるマーケット」のテレビ番組に当店のティラミス大福が取り上げられた。
取り上げられるや否や、電話は鳴りっぱなし、ホームページからの注文などめったに入らないのに、注文アクセス件数も始まって以来の大騒ぎ。
実はマスコミによる騒動は二度目である。一度は「景気好転まんじゅう」のとき。あの時も大変な目にあった。このたびは二度目ということもあり、対応もスムーズに行ったが、ご迷惑をおかけしたお客様もいると思いますので、この場をお借りしてお詫び申し上げます。

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■景気好転まんじゅう [7月4日(水)]

今から十四年前に父が他界し、家業の菓子屋を引き継ぎました。とは言え卸売中心の小さな菓子屋で、これから先どのような菓子屋を目指すのか分からず、不安な毎日を過ごしていました。そんな菓子屋が甦ったきっかけは「景気好転まんじゅう」です。
当時はバブル景気が弾け、日本は不況のどん底でした。当店も相変わらず売上げ不振でしたが、私も経営者の端くれです。自分の事はさておき、疲弊した経営者を何とか励まそうと思い立ち、「頑張れ経営者!景気好転まんじゅう」と名づけたまんじゅうを作りました。恐る恐る店頭に並べ、お客様の反応を見ていましたが、評判は上々、作る片端から売れていきました。しかし、ただ黙って販売していたのではそんなにブームにはならなかったかも知れません。私は地元の新聞社に駆け込み、取材してくれるように働きかけたのです。新聞社の方でも時代を反映してると興味を示してくれ、早速翌日の夕刊に大きな記事で掲載してくれました。
掲載されるや否や、問い合わせの電話は鳴りっ放し。経営者を中心とする顧客層に支持され、「景気好転まんじゅう」を求めに連日多くのお客様が来店してくれました。当店始まって以来の大騒動です。その後、この噂を聞きつけた他のマスコミからも取材申し込みが相次ぎ、全国放送のニュース番組にまで出させていただき、全国からも注文が入りました。お客様からは、「元気が出た」「励まされた」と、礼状が届き、大変喜んでいただきました。
その後、だんだんと景気も良くなってか「景気好転まんじゅう」は下火になりましたが、お陰様でこれがきっかけで全国的に有名となり、卸売りからも脱却でき、地元の菓子屋として皆さんから認めていただき、今日まで何とか繁昌させていただいております。
私はこの事例に教訓的なものを感じています。困っている経営者を何とか励ましたいという「思いやりの心」がユニークな商品開発につながり、尚且つこちらから積極的にマスコミに売り込みに行くという「プラス発想」で自らチャンスを作り、大ヒット商品にまで昇華させたことです。自分の会社が世の中の為に何が出来るか必死に考え、行動を起こせば道は必ず拓けてくると思います。
真っ先に景気が好転したのは、どうやら当店のほうだったようです。



[85]

■凝固剤 [6月1日(金)]

磯部晶策先生の勉強会で、凝固剤についてのご指導があった。現在では、菓子業界での凝固剤の主流はカラギーナンを始め、キサンタンガム、クァーガム、ローカストビーンズといった聞きなれないものばかりの食品添加物である。そういった添加物を複数混合すると、「増粘多糖類」という名称で通る。ドレッシングのとろみ付けや、中華麺などの保水剤として、あるいはアイスクリームの保形剤として、その他、沢山の食品に添加されている。
菓子の材料として登場したのは今から20年ほど前。多くは夏場のゼリーや、水まんじゅうの類に使用されている。
カラギーナンは、医学界では、発癌実験で発がん物質の効果を増幅させるために、実験動物にカラギーナンを注射するそうである。免疫力が低下する働きがあるのだ。
他方、カラギーナンは海草から作るのだからむしろ健康に良い、という反論もある。しかし、口に入るものであるので、疑わしきは使用せず、というのが私の方針である。
時代から取り残されたような気がしないでもないが、クソ真面目に寒天やくず粉を使い、昔ながらの製法で作っている。


[84]

■閑話休題 [5月12日(土)]

連休も終わり、やっと店も落ち着きを取り戻した。それと反比例して私は多忙になる。これから総会ラッシュ。加えて各種研修会の案内も多数届いている。
最近はモラロジーの研修に講師の鞄持ちで各地へ出向いているので、多忙を極めている。しかし、本業がおろそかになっては本末転倒であると心している。
家に居る時は出来るだけ菓子を食べるようにしている。私が客だったら満足するだろうか、常に自問しながら。最近は妻や長男、次男、長女の夫が当店に居るので、安心して留守に出来る。
人生常に勉強。向上心を持ち続けることは大変なことであるが、愛する家族や従業員、お客様の満足度向上のため、私のレベルを上げていかなければならないと思っている。
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[83]

■私の喜びの蔵書 [3月16日(金)]

私は好んで哲学書を読んでいる。自分の生き方に一貫性がなく、自信が持てないから
だと思う。一家の長であり、また経営者である私は、毎日が選択と決断の連続であ
る。特に人事に関する決断は重い。私に本当にそんな権限があるのだろうか、自責の
念に駆られる。毎日気が休まる事はないし、夜中に目が覚めることもしばしばである。
それゆえに反射的に道を求めて本を探す。先日上京した折、キオスクに置いてあった
文庫本の中に『中村天風の生きる手本』なるものをいつものように自然と手にし求め
た。思想家であり、ヨガの大家でもある氏の講話集。
帰りの電車の中で一気に読んでしまい、一冊五百数十円の本で、私の考えが一変してしまった。中村天風の名前は以前より知ってはいたが、どんな人物であるかは今回はじめて知り、氏の生き方にすっかり共鳴し、影響をうけた。
以前より私は「モラロジー道徳科学」の勉強をしている。天風の教えとモラロジーの
教えには共通点が多く、私のこれまでの生き方が間違いのないものである、という確
信を得、同時にこれからも勇気を持って信念を貫き通すべき自信が湧いてきた喜びの一冊であった。
本から受ける感想は人それぞれです。それぞれの感性で読み、受け止め、心に響かせ、自分の生き方にどう影響を受けるのか、それが問題である。どんな本を選ぶかは、読み手の現在の心のありようが大きくかかわってくると思うのである。

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■流行 [3月10日(土)]

インフルエンザが流行している。
我が家でも真っ先に高校1年の息子が罹り、家中にウイルスをばらまいた。可愛そうにおばあちゃんが被害に遭い、40度近い高熱で、5日間も床に臥せった。私や女房も喉が少々怪しいのであるが、うがいをしたり無理をせず早く休んだりして何とか乗り切っている。
店員の一人も昨日から発熱し、休んでいる。やはりインフルエンザの診断が出た。忙しいからと無理をせずにきちんと治ってから仕事に復帰する事は、他の人にうつさないためにも大切な事だと思う。
欠勤扱いでなく出勤停止措置である。自分さえ良ければ、他はどうなってもよいという考えでは一人前の考えではない。
インフルエンザは治りがけに他人にうつる確率が高いと聞いている。
世のインフルエンザにかかっている諸君。きちんと治ってから社会に出てきてください。きっと流行を食い止める事ができますよ。

[80]

■甘味不足? [2月12日(月)]

本日、80歳過ぎの男性の方から電話を頂きました。当店のしおりに「ご意見をお寄せください」と記してあるので一言意見を言いたいとのことです。
親孝行のご子息が甘いものが大好きなお父様にと、いつも当店の和菓子をプレゼントされるそうです。頂いたお父様のおっしゃるには、「近ごろの和菓子は甘くない。」「昔の甘い菓子が懐かしい」「私は和菓子屋から見捨てられた」との意見です。
私は決して砂糖をケチっているわけではありません。ましてや甘党を見捨てた訳でもありません。しかし、よい原材料であればあるほど、その素材を生かしたいと思うのは当然です。せっかくの素材の味を砂糖によって壊したくない、との考えから、どうしても甘さ控えめの菓子になってしまいます。
しかし、甘味離れが進んでいる現在、砂糖をどんどん減らせばいいということでもありません。それは私も同じ意見です。
そもそも、「砂糖」は肥満や糖尿病の元凶なのでしょうか。決してそうではありません。飽食の時代にあって食べ過ぎ、カロリーの摂り過ぎが万病の元だと思います。砂糖は摂取されると体内でゆっくりとブドウ糖に分解され、エネルギーに代えてくれますから必要不可欠の食べものです。また、脳のエネルギーになりうる唯一の食べものでもあります。
「甘い=太る」の誤解をお客様に正しく伝え、甘くなくなった菓子をもう一度見直す必要があるようです。
先のお客様にはご納得いただけたかどうかは分かりませんが、砂糖の甘さは、あらゆる甘味料で最も優れた甘さであると思っています。甘党に納得いただける菓子作りの研究。これからの課題です。


[79]

■趣味 [2月11日(日)]

私は多趣味である。一番の趣味はもちろん菓子作りであるが、俳句や茶の湯、最近では生け花にはまっている。
音楽に対してもどんな音楽でも興味を持ってしまう。バロック、オペラ、交響曲、ピアノ曲、ロックやポピュラーな曲から小唄、端唄、長唄、民謡や雅楽まで幅広い。最近購入したCDは山田耕作の「長唄交響曲」。探し当てた喜びにワクワクしながら拝聴した。
その中で今、最も身近にあるのが「小唄」である。小唄の会が毎月あり、師匠に稽古をつけてもらう。三味の音にあわせ、「梅は咲いたか、桜はまだかいな...」などと粋人気取りである。小唄は大声を張り上げてはいけない。あくまで踊りが主になる
ので目立ってはいけない。発表の場では「山形舞妓」の踊りに合わせ、調子外れの喉を披露する。否、小生の唄に合わせて踊ってくれる。
巷ではとっくに廃れてしまったが、旦那衆のお座敷遊びを真面目に取り組んでいる。
会の名称は「伝統芸能保存会・萬壽会」。居心地のよい処である。


[78]

■対岸の火事 [1月18日(木)]

不二家の不祥事が明るみになった。
私は不二家には少々同情的である。もちろん消費期限切れの原料を使用したり、基準より大幅に細菌数の多い商品を市場に出すなどとは言語道断であるが、マスコミが異常なまでに過剰反応をし、問題を煽っているようがしてならない。マスコミの餌食となり、もはや再起が容易でない事態まで追い詰められてしまった。
消費期限と賞味期限の区別を混同している人が多いが、消費期限は期限が切れたら健康被害が出る恐れのある日にち、賞味期限は美味しく食べられる目安。数年前までは製造年月日の表示であった。何時まで食べられるかは消費者の判断に委ねられていた。納豆やチーズ、缶詰などは新しいよりむしろ熟成した物のほうが美味しくなる場合もある。日本の食料自給率は4割を切っているのに、日本人が食べ残して棄てる量は、一説によるとエネルギー換算で一日、一千万食といわれている。地球の南半球では何億という人が飢えに苦しんでいるのにである。ここに賞味期限の弊害が及んでいると思っている。
不二家の場合は牛乳や生クリームなので消費期限である。健康被害が報告されなかったのは不幸中の幸いである。メーカーの良心が問われて久しいが磯部理念の4条件、4原則を守ることが当店の良心となろう。しかし、一歩間違えば対岸の火事見物で済まなくなる。気を引き締めなければなるまい。


[77]

■自句自解 [1月5日(金)]

私の所属する俳句の結社より、自作の俳句を紹介するコーナーの原稿の依頼がありました。ちょっと難しいかもしれませんが一足先にご紹介いたします。
自句自解

一切経落葉が浮力なくしたり 戸田正宏

平成十六年十一月の作。
 ものには必ず寿命がある。繁茂する木の葉もやがて凩に吹かれ落葉する。しかし、やがてその落葉が堆肥となり、花を咲かせ実を育てる。別の命を育む力となるのである。
 一切経とは仏教聖典の総称。万物を司る大自然の法則を解き明かしたもの。そのようにして万物は循環し、進化発展を遂げる。
 我々人類とて同じである。神をも畏れず傲慢となり、大自然との調和を怠る時、人類は滅亡の道を歩み始める。否、すでに滅亡が始まっているのだ。


[76]

■あけましておめでとうございます! [1月2日(火)]

皆様、あけましておめでとうございます。
今年は雪も少なく、穏やかな新年を迎えられました。
本日はお店を5時に閉店し、戸田家の新年会をこれから行います。
父が存命中に1月2日と決め、私の家族と姉弟の家族、あわせて20数名の大きな行事です。長男は修行中なので残念ながら参加できませんが、にぎやかに行われます。
長男といえば、修行の年季が5年経ちましたので今年の3月に帰ってきます。私としては楽しみ半分、不安半分といったところでしょうか。期待しすぎは良くないでしょうが、戸田屋に新しい空気が生まれることの期待はしています。
不安材料は、東京の一流の菓子屋での修行が、彼を高慢にさせていないかどうかです。謙虚でいてくれることを祈るだけです。
よく、親子で仕事をすると、意見の衝突で、職場や家庭がが暗くなったりする話を聞きます。事実、私も父に対してはむかってしまいましたので、覚悟は出来ています。
今度は私の度量が試される番です。74

[75]

■地産地消 [11月19日(日)]

山形はかんきつ類以外、ほとんど総ての野菜や果物が採れる。名の知れたところでは「さくらんぼ」「ラフランス」「だだちゃ豆」等。当然ながらそれをお菓子に利用しようと思うのだが、生食のほうが美味しいのか、銘菓になりにくい。それでもヒット商品を求めて果敢に挑戦している地元の菓子屋がある。ラフランスは今でこそ有名になったが、発端は杵屋本店さんが開発した「ラフランスゼリー」だ。あまりにも売れたので、ラフランスが追いつかなくなり、農家はあわてて作付けを増やしたほどである。杵屋本店さんのおかげでイメージアップにつながり、贈答用の生食ラフランスの需要も伸びた。菓子屋が農家の後押しをした好事例である。
農家もまた、新しい農作物開発に余念があない。県農業総合研究センター等の情報で、低アミロース米や日本原産の天然種自然薯等の地場ものが開発されている事を知った。菓子屋として見過ごすわけにはいかない。お菓子は素材の組み合わせや、その地方で採れるものを使用する事により、全く新しいものが出来るものだ。早速それらを使って新商品の開発に着手してみた。自然薯と低アミロース米を使って「かるかん」を作ってみたが、米のしっかりした味と粘りがあり、なかなか面白い生地になった。「かるかん」に対し「おもかん」とでも言うべきか。中のあんこをどうしようか迷ったが、村山地方で採れる「秘伝豆」という品種の枝豆の餡にしてみた。試食をした結果、郷愁をそそられる素朴で懐かしい味である。これから試作を繰り返し、新しい山形の味として商品化できればいいと思っている。
地産地消と言われているが、ややもすると原料調達の努力を怠り、安易に業者や他に任せきりにしてしまっている。しかし、農産県であることの利点を生かし、地元の農産物を大切にする事も、生き残りの重要な戦略の一つだと思う。


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■ツキを呼ぶ魔法の言葉 [11月5日(日)]

先日、五日市剛さんという科学者の講演を聞く機会がありました。タイトルは「ツキを呼ぶ魔法の言葉」3時間一人でしゃべるのですから大変な講演会でした。長時間でも飽きさせない話術を身に付けており、面白おかしく人生を語り始めました。
アメリカでの留学の事、両親の事、子供時代の事…そして挫折の末にイスラエルに一人旅をし、絶望感のなかで、イスラエルのおばあさんに運命的な出会いをしたこと。そのおばあさんに「ツキを呼ぶ魔法の言葉」を教えてもらった事。それから先は信じられないほどツキまくり、現在に至っていること。
「ツキを呼ぶ魔法の言葉」とは、失意の時に「ありがとうございます」と、声に出していう事。たとえ交通事故にあっても、大きな声で「ありがとうございます!」という事。そこから軌跡が生まれる。もちろん好調の時にも「ありがとうございます、感謝します!」と、声に出して言う。また、これからこういう出来事を期待したい、例えば〇〇大学に合格したいと思ったら先に「〇〇大学に合格しました。感謝します!」と大きな声で言いながら念じなさい。思いが強ければ必ず奇跡が起きます。という内容でした。
日本一のお金持ち、斎藤一人さんも合言葉は「ツイてる、ツイてる!」です。経営者の神様で有名な松下孝之助さんもどんな逆境にも「私は運がいい」と、言い続けたそうです。
人生の秘訣はどうやらその辺にありそうです。

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■花笠祭り考 [8月6日(日)]

昨夜から3日間、当地山形では花笠祭りを開催しています。目抜き通りは踊り手でいっぱいになり、観客の声援を受け、汗をかきながら踊りで答えています。
発足当初は振り付けが単一化し、見ていて退屈していたが、最近はバラエティに富んだ踊りがあり、観客を楽しませてくれています。毎年見物客も多くなり、一時の沈滞気分もなく、東北四大祭りとして随分定着しているものだと感じます。
全国区のマスコミでは相変わらず「東北三大祭」で、山形の花笠祭りは未だ認知されていないようですが、五十年近い歴史があるのですから「東北四大祭り」としてそろそろ認めて頂いてもいいのではないかと思っています。
以前の花笠祭りは、山形を代表する民謡に踊りをつけて大通りを練り歩く、というイメージが強く、観光客向けのイベントでしたが、最近は地元の見物客が多く、みんなで楽しもうという風潮が強くなってきています。そんな風に変えてしまった集団が「四方山会」です。
四方山会は初め、主催者側に随分非難されたようです。若い人たちで構成されている四方山会のキャッチフレーズは「踊る四方山」「魅せる四方山」で、とにかく型にはまった踊りでなく、花笠踊り発祥の地で今も躍り継がれている「笠回し」という踊りを披露しています。
花笠祭りもまた年月によって変遷していき、今ではその「笠回し」が主流の踊りになっています。そうすると必然的に、観光客のために踊らされている、という意識から、自分が楽しむために踊っている、という意識に変わり、俄然盛り上がりを見せます。当然地元の見物が増え、ここに来て初めて「おらほの祭り」という意識が定着してきたと思います。ついでに観光客も楽しませてあげます。
花笠祭りは、東北三大祭よりは歴史がないが、面白さを取れば他の祭りに決して引けを取らないものとなりました。
いずれマスコミも「東北四大祭り」として認知してくださるものと思います。

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■暑中お見舞い申し上げます [8月3日(木)]

今年は冷夏と思い、農作物の出来を心配していた。夏野菜は不作で暴騰し、甘味がなく、大変な年になると覚悟を決めた矢先、昨日から一転して猛暑である。
菓子屋は暑さに弱く、売り上げも気温と反比例しているので暑いのは困るのだけれど、やはり夏は暑くなければいけないと思う。菓子屋だけが良くても、農作物に影響があれば回りまわって必ずこちらにも影響が出る。事実、冷害の年はよく菓子が売れたものだが、翌年、必ず小豆やその他の農作物が品不足のため値上がりし、しっぺ返しがある。
梅雨の長雨に続く猛暑、自然界は極端である。人の心も徐々に極端になってきている。当店の社是に「和を持って尊し」と掲げているのであるが...
お見舞い申し上げます。

[70]

■(無題) [7月30日(日)]

先日本屋に立ち寄り、何気なく手に取った本を立ち読みして、迂闊にも涙をこぼしてしまった本がある。「鏡の法則」というタイトルの本、詳細は割愛しますが、親子の問題を通して「自分が今問題を抱えているのは、過去に自分がしてきた事を、他人を通して鏡に映し出している事である」というような内容の本です。私が勉強しているモラロジーで言うところの道徳的因果律のお話です。
感動で涙をぼろぼろこぼしながら立ち読みしている姿を想像してみてください。みっともない姿をさらけ出してしまいました。
余りにもいい本なので5冊あった本、全部買い占めてしまいました。ごめんなさい。
後で知ったのですが、ネット上で全文公開してあります。簡単に読めてしまう本ですので、興味のある方は「鏡の法則」を検索してみてください。

[69]

■献菓祭 [7月16日(日)]

山形は全国でも有数の山岳信仰の地である。北は鳥海山、東に蔵王、南に吾妻山、飯豊山、西には朝日連峰、中央に位置する葉山等、みな霊峰として古くから崇められ、祭られてきた。中でもその中心にあるのが月山、羽黒山、湯殿山を総称とする出羽三山である。出羽三山は、修験の場として全国から信者を集め、栄華を極めた。山形県では今、県民を挙げて出羽三山を世界遺産にしようと推進運動を展開中である。
山形県菓子工業組合では毎年、羽黒山神社で「銘菓奉献祭」通称「献菓祭」を執り行なっている。今年で58回目を数える伝統行事となった。県下から多くの参加者で賑わっている。山形市からの参加者はマイクロバスをチャーターして、皆で一緒に羽黒山に登るのが楽しみとなっている。車中は情報交換の場として大いに盛り上がる。途中、まだ雪の残る神秘的な湯殿山で身を清め、右手に月山を仰ぎ見、ちょうど昼時に羽黒山神社に到着する。
午後一時より厳かに献菓祭が始まる。山海の捧げものを神棚に供え、祭司が祝詞を唱える。巫女が舞い、玉串を奉呈し、全員が神殿に通され、金幣を拝戴し神事を終える。
私は献菓祭がある日は用事を作らないことにしている。つまり、献菓祭を優先している。しかし、私の意向とは裏腹に、毎年参加者が少なくなってきている。こういった行事に無関心な人が増えてきていることを痛感する。余りにも身近にあるせいか、有難さを感じなくなったのだろうか。しかし、神様を通じて菓子屋という職業に感謝の誠を捧げ、商売繁盛や家内の安全を願うのは、一昔前ならごく普通の感覚であろう。いくら時代が進もうと、不変の真理は時代に曲げられるものではないはずである。私たちは「菓子屋」という伝統に根付いた職業に携わっているのだから、自ら伝統を打ち破ってはならないと思っている。


[68]

■またまた寿退社 [7月5日(水)]

嫁に行っても当分は当店の菓子職人として活躍してもらうはずだった晃子さんが、7月1日付けで退職してしまった。嫁ぎ先が米沢と、通勤できない距離となった。初めは新居を上山に構え、二人で暮らす予定であったが、最初から両親と一緒に生活することになったようだ。いまどきの娘にしては何と殊勝なことだろうと感心している。
当面、工場は淋しくなるが、きっと幸せになってくれると信じている。

[67]

■饅頭開き [7月2日(日)]

お客様より、結婚披露宴でのセレモニーに大きい饅頭を用意してほしいとのご要望があった。花嫁が形見の着物で披露宴を通すので、「和もの」で演出したいとのことだそうです。ウェディングケーキの入刀に代わる「饅頭開き」の構想をお持ちでした。私はそういう特注が大好きである。早速アイディアを出し、お客様に提案した。
かくして、大きな三方に大きな紅白の饅頭を重ね、饅頭の上には練切りでこさえた「鯛」を乗せ、上生の松竹梅鶴亀をあしらった豪勢な饅頭が出来上がった。本番当日には新郎新婦が厳かに饅頭に包丁の入刀をする手はずである。
お客様には当日の様子をお知らせ願いたいと言ってあるので、近日中に報告があるだろう。きっとご満足のいただけるものとなったはずである。
菓子屋冥利に尽きるとは、こういうときである。65

[66]

■寒天 [6月10日(土)]

昨年は寒天ブームであった。しかし不思議なことに角寒天や糸寒天でなく、粉末寒天のブームであった。みのもんた氏がテレビで「寒天は体にいいダイエット食品なのでご飯や味噌汁に粉寒天を振りかけて食べるとよい」旨のことを放映したのがきっかけであったようだ。
粉末寒天はオゴノリが主成分で、別名「工業寒天」といわれ、工場内で生産される。粉末なだけに用途によってはカラギーナンや他の食品添加物が混入されたのもあるらしい。
他方、角寒天や糸寒天はテングサが主成分で、昔の製法を継承している。いわゆる自然界のフリーズドライである。
当店では、寒天は糸寒天と決めている。テングサを原料にしているからなのだが、それよりも手間ひま掛かる製法をずっと守ってくれた生産者を保護するためにも、何が何でも糸寒天と決めている。
日本人は飽きるのが早いので今年は寒天ブームも一段落するとおもうが、おかげでテングサの乱獲もあり、不作であると聞く。

[64]

■スィングボーイズ [6月7日(水)]

末の息子が今年高校に入学し、何を思ったのか吹奏楽部に入部した。男子校なので新入部員のほとんどが初心者だ。当然、息子も楽器などいじったこともないのに「バリトンサックス」を預けられ、悪戦苦闘している。
入部して一ヶ月目、父母の会の後に内輪だけのミニコンサートを開いた。新入生も一人づつ壇上に上げられ、一ヶ月の成果の発表となった。息子も何番目かの登場。曲は「ふるさと」♪うーさーぎーおーいし、か、の、や、まー♪のメロデーを訥々と吹きはじめた。全くの初心者の演奏である。彼には大変失礼だが、笑いをこらえるのに苦心した。が、吹き終わる頃には熱いものがこみ上げ、涙があふれてきた。音を出すのも大変な楽器を短い期間でよくもまぁ…先輩の演奏を聞きながら、わが子も来年はこのように上手く演奏することが出来るのだろうと思うと、期待感でワクワクしてしまう。
 来週は定期演奏会が開催される。一年生も当然繰り出される。自信のないところは演奏の邪魔にならないように吹く真似をしてお茶を濁すことになると思うが、余興ではダンスを披露するようだ。放課後、当店の駐車場に集まり遅くまで練習している。こちらの方は安心して見られそうだ。

[63]

■台湾研修 [6月6日(火)]

磯部塾の勉強会として、今年度は台湾研修を実施する。日本には見られなくなった古式醤油の工場見学や、漢方薬の専門家の講義など、台湾ならではのところを磯部晶策先生のコーディネイトで見て回る。
私も参加の予定だったが、部下に行ってもらうことにした。部下はもちろん台湾に行ったこともなければ海外へ行くのも初めてである。当の本人は台湾行きを本当に喜んでくれた。
実はこの男、当店に縁が出来る前に「台湾料理の店」を出すのが夢、と言っていた。一度は台湾に行きたいという夢を持っていたのである。それが思いがけず実現しようというものだから喜んだのも当然といえば当然である。
まだ若い彼にとって、台湾は誘惑の多いところと聞いているが、研修に出すのだから間違いのないようにと釘をさしておいた。
いよいよ木曜日成田を発つ。

[62]

■葛まんじゅう [6月1日(木)]

菓子の原材料で、ミックス粉が随分と出回るようになった。夏のお菓子でブームになった「水まんじゅう」や「葛きりそうめん」、「麩まんじゅう」などはメーカーが研究をして作ったミックス粉がなければもはや作れない、といっても過言ではあるまい。ミックス粉は便利な反面、どのような添加物が混入されているのか、安全面はどうか、元になるものの原料の信頼性はあるのか、などと突き詰めると、当店の菓子作りの四つの理念にことごとく外れてしまう。
昔からある材料で、昔ながらの製法で作る夏のお菓子をずっと以前から作っている。一見、時代から取り残されたような気もしないではないが、これが戸田屋正道の信念なのだから曲げるわけには行かない。
当店の商品に「葛まんじゅう」がある。日持ちはしないし、夏の菓子なのに冷蔵庫で冷やせない(食べる30分くらい前に冷蔵庫で冷やせば別ですが)が、本当に美味しいと自負している。葛まんじゅうが売れてきているが、本物の味が分かる人が増えてきている証拠だ。

[61]

■5月31日 [5月31日(水)]

当店では以前より「よつ*乳業」の発酵バターを使用しているが、他のメーカーを圧倒している。バターは、生クリームをバターチャーンという攪拌機にかけるとバターになる。発酵バターは原乳に乳酸菌を混ぜ、発酵させてから攪拌する。しかし、残念なことに普通のバターに後から合成香料の発酵臭を煉りこんだ物が多く出回っているのが現状だ。菓子のプロでもなかなか見破られない。「発酵臭バター」は焼き菓子に使用した場合、部屋中発酵臭が充満し、嫌な思いをするが、本物はほとんど臭わない。むしろさわやかな香りである。もちろん値段も味も違う。
「カ**ス」より、試供品を請求していた低水分バターが届いた。一流のパティシェが競って使用している、菓子業界では評判のバターである。バターから水分を抜くのは手間が掛かるし、コストも高くつくのでメーカーもなかなか作ろうとしないようだ。これからその試供品を使って、試作しようと思っている。
バターひとつとっても本当に選ぶのが大変である。

[60]

■母の日 [5月14日(日)]

私はに4人の子がいる。それぞれ個性があり、立派に成長してくれているが、成長過程では心配の掛けられ通しである。病気で熱を出しては眠ずの看病をし、怪我をしては大事に至らぬ事を祈り、学力向上のために学習塾や通信講座などで大金(?)をつぎ込み、高校、大学と進学するにつれて益々経済的に負担を強いられる。
しかし、我が子の為なら自分をも省みず、喜んでせっせと貢ぐのが親である。そこには将来の打算など微塵もない、純粋な愛情があるのみである。親はわが子の平穏無事な成長をただ祈り見守っている。
ところが成人した子供の多くは、一人で一人前になったような顔をし、親を疎んじる。「親の心子知らず」である。4人の子を授かり、初めて親心を痛感している。私もかつては親心など知ろうともせず、勝手な言動をしていたことに、とても恥じている。父を亡くしてしまった今、父の分まで母にお返しをさせていただく気持ちでいる。今日は母の日。

[59]

■桜道明寺 [5月11日(木)]

毎年、春になると桜餅を作る。最初は焼き皮の桜餅。桃の節句を過ぎた頃には道明寺製の桜餅になり、桜が散り始めたら製造を中止する。ところが、私の尊敬する、師匠の磯部晶策先生より、道明寺製の桜餅を年中商品にしなさい、と、ご指導頂いた。商品名も「桜道明寺」と命名していただいた。
一般の桜餅と違い、当店の桜餅は着色しておらず、純白である。先生の説では
『桜餅は桜の葉で包むから桜餅であり、桜の花を表わしているわけではない。桜の葉は塩漬けなので一年中手に入る。よって通年販売をしてもおかしくない。』
との理由である。しかし先生の本音は、当店の道明寺が好みで、先生が一年中食べたいからに違いない。
私も、季節商品を通年商品とするからには大義名分が必要である。そこで、プライスカードに「磯部晶策先生お好み」と一筆書かせていただいた。


[58]

■バナナ大福 [5月7日(日)]

バナナ大福の試作を繰り返している。
毎年この時期になると季節の大福のひとつとして売り出しているが、いまいち納得がいかなかったので、昨年は出さなかった。ところが、そのバナナ大福の味が忘れられないというお客様がおり、今年はもっと美味しいバナナ大福を研究し、必ず商品化します、と、約束をしてしまった。
約束したものの、四苦八苦している。バナナには酸味がなく、味がぼけるため、バナナと相性のいい別なものと組み合わせる事によってバナナの味を引き立たせることを思い立った。随分色々と試した結果、パイナップルの酸味が一番相性がいい、との結論となった。早速パイナップル餡を炊き、試食した所、ほぼ全員が「美味しい!」との意見であった。あとは細部の詰めの段階である。苺大福が終わる頃(5月下旬)には店頭に並ぶと思う。乞う、ご期待を!

[57]

■子供の日 [5月5日(金)]

昔、子供がいるご家庭では、柱に傷がつけてあった。「♪柱の傷はおととしの五月五日の背比べ♪...」かつて、我が家にも何本か傷の付いた柱があった。、父母は我が子の成長を喜んだに違いない。子供の頃、「子供の日」が来るのを待ちわびていたことを思い出す。別に特別なことはないのだけれど、ワクワクした感情で迎えた。子供の日は柏餅を作るために朝早くから職人さんたちが仕事をする。私も小さいながら、何か手伝いたくて、まだ暗いうちに起きて工場でうろうろしたもんだ。
商売をしていると、その子供たちは当然、手伝いをさせられる。無償で。小さいうちから職業意識や生活力が普通の子よりたくましいのはごく自然である。
今の子供たちはインターネットやテレビゲーム、アニメーションなどで疑似体験は豊富なのだが、生活からの実体験が全くといって良いほど無い。学校で「体験学習」なるものを授業に取り入れられている。当店も子供の受け入れ先となっている。しかし、それとて疑似体験なのである。
考えられないような事件がたびたび起きるのも、リセットボタンを押せば一からやり直しが利くとでも思ってのことだろうか。

[56]

■憲法記念日によせて [5月3日(水)]

本日は憲法記念日です。日本国憲法が発令された日としての記念日です。
当時の時代背景は、敗戦国日本が、戦勝国アメリカを初めとする連合国に支配されていたときに作られました。
旧憲法では天皇を中心とし、国民は家族であるという思想なので、有事の際はまた日本国が国家として纏まり、世界の中心になることを恐れ、国家解体を目的にして作られたGHQによる押し付けの憲法であったことは曲げようのない事実のようです。
そのため、制定された当初から改憲論が出、自民党が結党された時も、日本人の手で新しい憲法を作ろう、と立ち上がったとも聞いています。
世界どの国においても、平和憲法なるものは日本以外ありえません。憲法の良し悪しは別にしても、最近余りに平和ボケしている日本人の多いことか。自分の国は自分の手で護っていこうとする気持ちを忘れてしまったことにより、日本人としてのプライドや緊張感がなくなり、個人主義が蔓延してしまっているようです。外に目を向けると、日中や日韓間の領土問題、北朝鮮の拉致問題、イラク問題など、世界情勢は益々緊迫の域に達しています。
戦後60年、国に対して権利ばかりを主張して、義務を果たすことを忘れてしまっているのではないでしょうか。憲法に保障してあるとおり、個人の自由や人権は、何人たりとも犯してならないのは言うまでもありません。また、幸福になる権利はどなたでもあります。しかし、自由や権利は国が成り立って始めて享受できるものです。なぜ、もっとそのことに気づいて日本という国を大切に出来ないのでしょうか。海外に行った人なら感じているでしょう。日本文化の素晴らしさを。日本人であることのありがたさを。
拝金主義が行き過ぎて、心が付いていかなくなり、法律ぎりぎりの所で金儲けをしたり、親の扶養義務を怠ったり、公衆道徳を守れなかったりと、自分さえよければと思える行動が目に余ります。このままでは、日本という国の存在自体が危ぶまれます。
私たちは護憲や改憲を言う前に、日本人としての義務をもっと果たすべきです。国が私たちにしてやれることなど、たかが知れています。しかし、私たちが国のためにしてやれることは沢山あると思います。



[55]

■継続は力 [5月1日(月)]

この日記もそうだが、どんなことでも継続させるのは至難の業だと思う。
例えば、この日記をつけ始めてからまだ一年にもなっていないが、まだ毎日の習慣づけになっていない。自己啓発の勉強会で、「ハガキ道」の話を聞いてきた。毎日ハガキを5通出す、というものだ。継続すると人生が変わるそうだ。良い事を聞いてきたので早速実行に移したものの、三日続かなかった。
トイレ掃除は心を磨く訓練、と聞いてきた。早速実行するも、やはり続かない。
毎日の晩酌は、やめようと思ってもずっと続いているのに。
どうやら、よいと思っていることは継続できず、よくないことは、悪いと知りながらやめられないようだ。
よいと思うことが継続して出来たなら、きっと素晴らしい人生になるに違いない。とりあえず、この日記だけでも継続してみようか。

[53]

■結納 [4月29日(土)]

今日は、当店の女性職人の結納式です。
彼女は、函館の専門学校で菓子の勉強を積み、山形の某菓子屋さんに就職しました。しかし、就職先の事情でやむなく転職し、事務職に就いたのですが、ディスクワークに耐えられず、収入や待遇面で劣る当店に入社してきました。
あれからもう6年。わが娘のように可愛がり、花嫁修業をさせるつもりで、躾や華道の勉強などをしてもらいました。また、職人としてもどこに出しても恥ずかしくない技術や知識も身についたと思っています。いつまでも当店に置いておきたいと思う反面、彼女の将来を考えると、そろそろ身を固めさせたほうがよいと思い、何度かお見合いをしてもらいました。
しかしこのたび、友達の紹介で、よい人を見つけたようで、真面目なお付き合いを経て、縁談が纏まり、本日の結納式となったようです。
私としてはとても淋しい気持ちでいます。しかし、嫁に行っても当分は当店の菓子職人として活躍してもらいますが、本人の幸せを第一に考えてあげなければと自分に言い聞かせています。

[52]

■言い訳 [4月28日(金)]

しばらく日記を付けていないことを友人に指摘され、言い訳をします。
前の日記で、当店の店員がお客様に叱られたことを、反省を込めてずっと残しておいたのです。一刻も早く過去のものにしてしまいたいという気持ちでいましたが、しばらくは当店の恥を晒しておき、二度と同じ過ちを犯さぬように自分に言い聞かせていました。幸い、叱られた店員も、なぜ叱られたか理解し、反省してくれています。あれからだいぶ立ち直ったので、店にも出させています。痛い目にあって、やっと接客の本質をつかんでくれたと思います。これからは、うわべではなく、心を込めたおもてなしをしてくれると思います。接客技術は下手でも、真剣さが伝われば気持ちがいいものです。

[51]

■お客様、寛容なお心で見守りください [4月3日(月)]

まだ開店の準備も整っていないうちにお客様がいらして、応対した店員の態度に立腹し、大声で怒鳴られてしまった。
四人の店員のうちの一人、実は以前から私も心配をしていたのだった。
面接をして、試験を受けて合格し、採用をしたのだから私の責任である。店員教育も口うるさい位してきたのだが、どうも店に出ると声が小さくなり、一生懸命さが表に出なくなるようだ。
本人の生い立ちや、生活環境が性格を決定づけると言われているが、短い面接時間で見抜くことが出来なかった私の責任である。だから私の責任で今後の対策や、その店員の処遇を決めなくてはならない。
以前の私なら、辞めてもらうことを第一に考えたろう。しかし、辞めさせてもまた次に入ってくる子が優秀な子だとは限らない。ここはひとつ、その子の親になったつもりで育ててやろうと思っている。
またお客様から叱られてしまうことがあるかもしれないが…七割のお客様が、店員に不満を感じたら、もう買いに来なくなるそうです。しかし、売り上げももちろん大切だが、その子の人生の方がもっと大切な気がするのです。せっかくのご縁で入社してきたのだから、鍛えなおして又、店員として働いてもらおうと思っています。
従業員も沢山いるわけではないので、当然その子も店に出ながらとなるが、再教育をして、本人に自信と勇気をつけさせるつもりでいます。
お客様にはいつもご心配やらご迷惑をおかけいたします。どうか、その子の今後の為にもご理解とご協力をお願いいたします。

[50]

■お待たせしました [3月27日(月)]

皆様、お待たせしました。ようやく受注態勢を整えましたので、ネットショッピングの再開をさせていただきます。
具体的に取った行動は、
これまで漠然とメモ紙に大事な注文を書き留めて、誰が責任を持って発送したのかもわからないでいましたが、新たに「注文請書」を作成し、誰が見ても一目瞭然、すぐにわかるようにしました担当者名を書き込み、責任者を明確にしました。
?毎朝、担当者がチェックし、責任を持って梱包するように指導しました。
?発送専用の冷凍冷蔵庫を購入し、保管場所を決め、発送漏れをなくしました。遅番が帰るときに、再度、確認作業をするようにしました。
以上です。不備な点は、そのつど改善させていただき、当店の発送ノウハウとして蓄積してまいります。どうぞ、ご協力くださいませ。



[49]

■3月21日 [3月21日(火)]

今日はお彼岸中日。春の彼岸は最も忙しい。今日も朝から行列が出来、てんてこ舞い。のはずが、11時過ぎから客足がまばらに。ワールドベースボールクラッシックの決勝戦がテレビ放映された影響と思われる。王ジャパン、世紀の決戦。結果はキューバに10対6で快勝し、世界一となった。職人さんたちも昼休み、テレビにかじりついていたが、最後まで見ることができず、しきりに残念がっていました。
3時過ぎからまたお客様が戻ってきましたが時すでに遅し、本日は戸田屋が王ジャパンに完敗した記念に残る彼岸でした。

[48]

■彼岸入り [3月18日(土)]

今日18日は彼岸入りです。当店の最も多忙な行事です。お客様や注文に追われ、お店も工場も必死です。でも、みんな文句も言わず、ニコニコして仕事をしてくれます。みんな、自分の役目を自覚しているのです。そんな従業員を持って私はとても誇りに思いますし、幸せを感じます。もっともっと待遇をよくしてあげるよう、私も頑張ろうと思っています。

[47]

■お客様、申し訳ありません [3月15日(水)]

当店の大福を発送するよう、ご用命を頂きながら、当店の不手際で発送を怠り、あるお客様に大変なご迷惑をかけてしまった。理由は受注をした時の責任者の不在と、チェック機能の甘さによる単純なミスです。少しぐらい売れるからといって、いい気になってネット販売などに手を出すからこのような事態になってしまいました。深く反省をしております。お客様にはお詫びの仕様がありません。謝って済むことではありませんが、発送業務に対するマニュアルが出来るまで、メールによる受付を自粛させていただきますので、ご理解と、ご協力をお願い申し上げます。

[46]

■3月12日 [3月12日(日)]

4番目の子供が高校受験である。先日、試験を受けに行ったが、自信満々で帰ってきたようだ。安全策で、志望校を一ランク落として望んだので余裕だったのだろう。親として複雑な心境である。リスクを背負わせて難関に挑ませるか、安全策をとるか、選択を子供に任せたが、やはり、安全策をとった。将来に影響が出なければいいのだが...

[45]

■3月6日 [3月6日(月)]

本日は、私たち夫婦の結婚記念日です。昭和52年の今日、結婚式を挙げましたが、当日は雪が降りしきり、一面銀世界で、私たちの門出にふさわしい朝でした。
余談ですが、カミさんは静岡出身ですので、祝福に来ていたご両親や弟が外に出て、しきりに雪で遊んでいたのを思い出します。よほど雪が珍しかったのですね。静岡ではゴミのような雪が降っただけで皆「雪だ!雪だ!」と騒いでいました。当時はカミさんも雪がお気に入りのようでしたが、今ではうんざりしています。「雪は山にだけ降ってくれればいい」などと勝手なことを言っています。
あれから早や29年。紆余曲折はありましたが、4人の子宝に恵まれ、それぞれの道を歩み始め、孫2人も授かった。夫婦も自慢したくなるくらい円満です。

[44]

■3月5日 [3月5日(日)]

友人と昼食会。彼は数年前、病気で失明した。失明当初は、精神的にかなり参っていたようだが、最近は心眼が開けたとでもいうのだろうか。穏やかな心で私を包んでくれる。目の不自由さを私がカバーするのだが、彼は私の気持ちを理解しようと、一所懸命に話を聞いてくれる。その彼から「戸田君とは親友だよね」と、言われた。涙があふれ出た。

[43]

■3月1日 [3月1日(水)]

早いもので、今日から3月。3月は3日が桃の節句、14日がホワイトデー、18日彼岸の入りで21日が彼岸の中日。その他卒業式や合格祝、送別会やらで、一年で最も多忙な月である。最近、歳時に強くなってきたのは嬉しい。正月やお盆、お彼岸など、菓子の需要期には、それぞれの菓子屋さんが皆、多忙なわけだが、それでも人気の菓子屋にお客さんが殺到する。以前の戸田屋なら、普通よりちょっと忙しい程度であったが、今は5人の販売スタッフがフル稼働でも目一杯である。歳時に強いということは、普段の努力の賜物であると喜んでいる。

[42]

■2月26日 [2月26日(日)]

3月2日から約2週間、店前の道路工事がまた始まるらしい。街並再開発で、向かい側の区画整理の工事が一年以上続き、一段落した矢先に、またである。街並や道路が綺麗になるのは結構な話であるが、商売に影響のない方法でしてもらいたいと願うのは、私の勝手な言い分であろうか。公共事業の大義名分の元、「道路は工事をするためにある」と言わんばかりに、工事車両を優先させて交通整理をしている警備員などを見ると、腹が立ってしょうがない。もう少し謙虚にやってもらいたいとおもうが、如何であろうか。ともあれ、お客様に多大なご迷惑をおかけすることになる。売り上げがどうの、よりも、お客様にすまない気持ちが先に立つ。

[41]

■2月25日 [2月25日(土)]

「萬寿会」という、伝統芸能を伝承している会がある。などというと聞こえがいいが、早い話、「小唄」の稽古をやったあと、懇親会と称して、料亭の料理と、酒をご馳走になる会。師匠は小菊姐さん。八十過ぎの高齢者だが、まだまだ達者である。
夕べはその会合であった。小唄は口伝なので、音符はもちろん無し。伴奏は三味線。二上がりだの、三下がりだの、洋楽にない独特の節回しがあったりして、小生にとってなかなか面白い。お召しの着物を着て参加するのが決まりなので、亡き父が遺していった物を借用して出掛ける訳であるが、おかげで和服の楽しさもあじわっている。

[40]

■2月24日 [2月24日(金)]

最近、また、当店に取材の申し込みが増えている。春先になるとタウン情報誌がお菓子の特集をしてくるので、白羽の矢が立つらしい。有難いことです。どのお店も季節を感じられなくなって久しいですが、唯一、和菓子屋は春の先取りで、桜餅や、鶯餅、いちご大福など、あちらこちらに春の息吹を感じることができます。ありがたいことです。

[39]

■2月20日 [2月20日(月)]

昨日まで商業界のゼミナールとモラロジーの基礎講座の受講のため約一週間留守にした。商業界では、商売の最先端の情報を沢山仕入れてきた。また、モラロジーでは、心づかいと行ないに関する指針を伝授していただいた。商業界とモラロジーは車の両輪、どちらも大切な勉強会である。
私の心の師であり、磯部塾の先輩でもある横尾昭男さんの作った「あかね姫」が山形県漬物品評会で最高賞の「農林水産大臣賞」をいただき、その祝賀会が本日開催される。お使いをいただいたので、喜んで出席させていただく。

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■2月13日 [2月13日(月)]

今日もご近所のお葬式に行ってきた。2日続けての葬式はつらい。
明日はバレンタインデー。大福のラッピングの注文が殺到したようだ。「手間が掛かるけど、ラッピングは楽しい作業です」と、お店の女の子の報告を受けた。楽しく仕事が出来る能力は素晴らしいと思う。当店の宝です。
倫理法人会の公開セミナーに参加した。とても為になり、参考になる話だった。早速、実践したいと思う。
明日から1週間、商業界のゼミナールと、モラロジーの基礎講座で留守にする。学生時代よりはるかに今の方が勉強していると思う。それを如何に実生活で役立たせるかが問題だ。36

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■2月11日 [2月12日(日)]

建国記念日。店の前に国旗を掲揚する。
ご近所の人がまた亡くなった。忌中お見舞いに行く。
14日から19日まで、研修に出かける為の準備をする。34

[35]

■特別作品 [1月27日(金)]


「雪明り」

柿に雪釘浮く無垢の朱印筥
鷹は木に御朱印蔵の安堵状
武者蔵に雪の重さのありにけり
熊穴に入る屏風絵の天秤棒
野兎の跳ねて深まる紅綸子
雪に耐ふ荷継問屋の木札かな
根雪かな土間に転がる馬上盃
家系図の余白に消ゆる冬北斗
飯櫃に氷柱のひかり零れけり
ラ.フランス熟るる難所の測量具雪明り歌仙は曾良で了りけり手焙の灰汁の寒さや茂吉の居谷地、堀米邸(紅花資料館)から最上川を下り、大石田へ吟行す
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[33]

■11月の俳句 [11月26日(土)]

早いもので今年もあとひと月を残すのみとなりました。今月も俳句を作りましたので鑑賞してみてください。

龍淵に潜みて噴煙真直ぐなり
白描の鳥獣戯画に秋の風
色ながら散るや長押の釘隠し
墨跡や錦木紅葉掃き寄せよ
金筋の焼刃や蚯蚓鳴き果てり
破れはちす水に謀反のなかりけり
月夜茸泪は斯くも暖かし

11月6日、上野、池之端文化会館で、私の所属する結社の全国大会に出席し、本年度の「鍛錬会賞」をいただいてきました。「新人賞」をいただいてから丸3年。実力がついてきた事に私自身、驚いています。

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■十三回忌 [11月15日(火)]

先日、創業者で父親の十三回忌の法要を済ませました。父が亡くなってから丸12年が経ちました。その間、後継者の私として、無我夢中で働いてきました。経営上の悩み事や、判断に迷ったら、先ず、父だったらどうしたであろうかと考えます。その上で判断を下したら、大きな間違いを犯すことはないと思います。
私の人生の目標は「家族を大事にし、幸せな人生を全うすること」です。決して「商売」を目標にしていません。かと言って商売を疎かにはしていません。家族や従業員、お客様の幸せを守るために一所懸命努力させていただいております。目標を商売に置くと、どうしても家庭を犠牲にしてしまい、ややもすると従業員に対しても金儲けの道具くらいに思ってしまいます。
十三回忌法要にあたり、父の墓前に、これまでの至らなさを反省し、今後の精進をお誓いしました。29

[30]

■結婚披露宴に参加して [10月22日(土)]

お店で一生懸命接客の仕事をしてくれている育ちゃんが先週、結婚しました。交際してから6年。長かった春がようやく訪れました。夫婦で式に参列し、祝辞を述べてきましたが、披露宴は感動の連続でした。エピソードを少しご紹介します。
自分のウエディングケーキの他にもう一個、小さいサイズのウエディングケーキを作るように頼まれていたので、何に使うのだろうと思っていましたが、自分たちの入刀を済ませたあと、義理の妹夫婦をステージに呼び寄せ、小さい方を入刀させたのでした。妹夫婦は籍は入れたものの、事情で式を挙げていなかったのです。一同、感動の涙を流したのは言うまでもありません。
披露宴も佳境に入るころ、花嫁のブーケを最も大切な人にプレゼントするというコーナーがあり、誰あろう、私の家内が選ばれました。家内はもちろんのこと、私も今まで実の娘のように可愛がっていましたので、育ちゃんの気持ちに大いに感動しました。
結婚式を通して、信頼関係が一層強くなった気がしました。育ちゃん、これからも戸田屋の看板娘としてがんばってください。



[27]

■快挙 [10月11日(火)]

10月15日、16日の2日間、鶴岡マリカを会場に「山形県菓子まつり」が開催されます。イベントのひとつに「県産農産物を使用したお土産コンクール」が開かれます。すでに事前審査が行われ、賞が決定しました。当店では、私を含め菓子職人6人全員がエントリーし、なんと6人全員が入賞を果たしました。
粕谷直子「山形県菓子工業組合理事長賞」(2位)、私、戸田正宏が「庄内地域産業振興センター理事長賞」(3位)、設楽晃子「山形県中小企業団体中央会長賞」(5位)、新田友也「山形県食品産業協議会長賞」(8位)、設楽辰義「奨励賞」(10位)、阿部譲一「奨励賞」(14位)です。
どんなお菓子を作ったかは後ほどお知らせしますが、戸田屋正道の実力が証明された快挙と言うほかありません。庄内地方にお住まいの方は是非足を運んでご覧ください。そのほかにも楽しい催し物が沢山ございますので。

[26]

■秘伝豆 [10月8日(土)]

一週間遅れで「秘伝豆」が、入荷しました。村山地方で採れる枝豆のことです。風味が強く、大粒なので、菓子の材料として最適な豆です。普通の枝豆と違い、収穫時期が遅いので今頃になります。この豆を、近所のおばちゃん連中を頼んで、鞘から一粒づつ弾き出してもらい、すりつぶしてあんこにします。鞘から弾き出す仕事は、一時間に五キロがやっとです。とても手間のかかる仕事です。枝豆に限らず、栗の皮を剥いたり、芋を剥いたり、全部自社工場で加工しています。菓子屋はつくづく手間を売る商売だと思います。ひとつの菓子に、如何に手間と心を込めて作っているかが、当店の強みになっているのだと思います。手間を惜しんで生産性だけを追うことは、私にとって自殺行為です。24

[25]

■ご本家 [9月23日(金)]

私の家のご本家は最上川沿いの大石田町という、人口八千人足らずの小さな田舎町にあり、やはり菓子屋を営んでいます。屋号を「うろこや」と言い、北郡一の大きな菓子屋です。。社長は私の従兄で、私の父の実家です。
普通、親戚とは言え、同業者ならば仲のいい関係を保つことは容易なことではないようですが、私は、勉強熱心な「うろこや」さんの社長を尊敬しており、「うろこや」さんから色々教わりながら刺激を受け、良いところはどんどん真似ています。おかげさまで、今日まで何とか繁盛させながら、商売を続けさせていただいております。
私は日ごろから「本家の繁栄は分家の喜び」「本家の一大事は分家の一大事」と考えています。父は実家である「うろこや」をとても大事にしていましたので、その後姿を見て育った私も、そのような考えになったのだと思います。私が中学生になったばかりのころ、最上川が氾濫し、本家が床上浸水になったことがあります。父は自分の商売を投げ打って、「うろこや」さんに飛んで行き、後片付けの手伝いなどをしてきたようです。口だけではなく、行動に移して私をそのような教育をしてくれました。
私はまだご本家のお役に立つようなことはしていませんが、私がこの世に存在しているのも、ご先祖様のつながりのひとつであり、それを受け継いできたご本家がちゃんと存在し、繁栄しているからこそだと思っています。私にとってご本家は感謝の対象物です。今日は秋の彼岸です。

[23]

■9月の俳句 [9月21日(水)]

今月作った私の俳句をご紹介いたします。

円墳や七草のごと秋桜
釣瓶落し天動説も亦然り
性悪説銀河一端曇りけり
パンドラの箱や野分に潮の香
天平の残香極む秋の蝉
前夜かな野分を阻む能衣裳
八朔の清水涸るるや開拓史(追悼句)

最後の句は、私が所属する俳句の会である同人誌「朔」の仲間の訃報を受け、作ったものです。お付き合いは決して長くはなかったのですが、彼との思い出は沢山ありました。彼は癌の告知を受けており、死期を悟っておられたのでしょう。術後まもなく、わざわざ東京から逢いに来てくれました。それが今生の別れとなりました。21

[22]

■叱るか誉めるか [9月10日(土)]

先日、ある経営者セミナーに参加してきました。その中のある講師が、従業員を誉めて育てるか、叱って育てるか、と、問題を提起しました。その講師は、絶対に叱り飛ばして育てるべきと、強く訴えていました。
私の教育は長所を伸ばして短所を見えなくしようという考えですので、どちらかというと誉めて育てようという考えです。しかし、その考えは、ややもすると、おだてて甘やかして言うことを聞かせ、なるべく嫌われないようにしよう、などと、自分を保身した甘ったれた考えになる危険性があります。人を叱るということは、その人を本当に育てようという崇高な愛がなければ出来ません。そういう観点から見ると、私は逃げてしまっているのかもしれません。もっと強く従業員のことを考えてやるべきだと思います。
先の講師は厳しく躾をしたうえで、お客様に誉めてもらおうという結論です。なるほど、この講師は私より数段従業員を愛していらっしゃる。私の完敗です。


[20]

■新人 [9月3日(土)]

愛ちゃんに代わり、新人の祐子ちゃんが入社してくれました。笑顔が自然で愛嬌があり、陰日なたなく、嫌な仕事もてきぱきこなしてくれます。いい子が入社してくれたと、喜んでいます。
実は、祐子ちゃんの入社が決まるまで、沢山の人と面接をしました。ほとんどが不採用通知を送ることになってしまったのですが、採用の判断基準に真っ先に挙げるとすれば、「素直さ」に尽きると思います。仕事はいい仕事もあれば、やりたくない仕事もあるわけです。嫌と感じる仕事でも、笑顔で嫌な顔ひとつせず、進んでしてくれる人を、面接の短い時間で見抜くわけです。仕事人のプロとしての自覚を求めるわけですが、教育をして戸田屋の人間に育て上げるより、初めから自然と備わっている人を採用できれば、無駄な時間を費やして教育する必要がないわけです。第一、人を教育で変えようなどと私にはできないと思っています。
不採用となった人たちには誠に申し訳なく思います。人を雇い入れることは会社にとって高額な買い物をするのと同じです。慎重にならざるを得ないことをご理解のうえ、ご縁がなかったものとしてお許しください。ご多幸をお祈りいたします。18

[19]

■寿退社 [8月23日(火)]

3人の店員のうちの1人の愛ちゃんが、遠距離恋愛をしており、8月いっぱいで退職し、彼の元で生活することになりました。このまま山形に残り仕事を優先するか、結婚をとるか随分悩んだ末の結論です。私は常々「迷ったら個人の幸せを第一に考えなさい」と言ってあるので、彼女が選んだ道を惜しみなく祝福しています。当店に就職が決まったら、女の子なら「花嫁修業をするつもりで頑張りなさい」と言っています。わが子が嫁に行ってしまうような心境で、淋しいのですが、きっと幸せを掴んでくれるものと思っています。
程なく、今度は芳枝ちゃんが泣きながら、彼の元に行きたいとのこと。彼女もまた遠距離恋愛をしていたのです。9月末をめどに寿退社をすることになりました。
二度あることは三度ある、です。育子ちゃんが、10月に結婚をすると言い出しました。さすがの私もこれには参ってしまいました。幸い、育子ちゃんは結婚しても通勤できるところに新居を構えるそうなので当分、私の元で働いてくれるそうです。育子ちゃん、お店を頼みますよ。

[17]

■今月の俳句 [8月23日(火)]


北海道に研修に行った際に作りました。
難解句ばかりで申し訳ありませんが鑑賞してみてください。

鯱が乗る小樽倉庫に江戸切子
アイヌコタン季夏の運河は澄みにけり
蕎麦咲くや番屋に詰めるヤン衆ら
ムックリや御殿を砕く夏怒涛
亜麻引くや線路の没す倉庫街
薄荷油に炎暑の翳りありにけり
疑似卵の目覚めや雲の峰近し

いかがでしょうか。北海道、特に小樽地方の風土が眼に浮かぶようですね。
本来は縦書きなのですが、縦書きに出来ないようですので、ご了承ください。


[16]

■行列 [8月14日(日)]

昨日はお盆の初めの日。土曜日と重なり、沢山のお客様が来店してくださいました。
一時、お客様が店外にはみ出るほどの混みようでした。店員総出で応対しましたが、当然自然発生的に行列が出来てしまいます。
よく、「行列の出来る〇〇」という言葉を耳にしますが、私の本意とする所ではありません。沢山来てくださることはうれしいに決まっていますが、店員には常々お客様と一対一の真剣勝負をしなさいと指導しています。当店の理念にも書いてありますが、お客様の後姿に「どうぞお幸せに」と祈る気持ちを忘れなければいいが、粗相がなければいいがと、店が混雑するたびに思うのです。
お忙しい中文句も言わず、わざわざ並んで買っていただいたお客様、本当にありがとうございます。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

[15]

■教育者研究会 [8月5日(金)]

昨日、私が責任者として、モラロジーの教育者研究会を開催しました。学校の先生を対象に、授業の中に道徳を如何に取り入れていくか研究しようというのがねらいです。
まず、人集めに苦労させられました。夏休み期間中でもあり、先生たちは暇をもてあそんでいると思いきや、さにあらず。他の研修や、水泳監視、部活指導、補習授業、三者面談。中にはのんびりと家族旅行を楽しんでいる先生もいましたが、夏休みでも、ハードスケジュールのようです。私は、4人の子持ちで、PTA活動にも積極的に参加していましたので先生とのつながりも多いのですが、お誘いした約50人の先生から、ほとんど都合がつかない旨の返事ばかりでした。ゆとり教育などと言われて久しいですが、先生たちは、たった一日の研修にも参加できない(参加したくない)ゆとりのない中で、自己研鑽は、どのようにして積んでいるのだろうと、ちょっぴり不安になりました。自分に如何に投資をし、自己犠牲を払って人間性を磨こうと思っている私にとって、先生という職業は理解しがたい存在です。勉強は教員免許を取得した時点で終了ですか?先生。


[14]

■小豆 [7月31日(日)]

北海道研修をお世話してくださった福居さんという方は、旭川で製餡業を営んでいます。菓子屋向けのあんこやさんです。福居さんと小豆や、あんこのことを話題にしましたが、十勝ばかりが小豆ではないと、力説していたのが印象的です。現に、福居さんは旭川の近くで栽培された小豆、「朱鞠(しゅまり)」という品種を大事にし、あんこに加工していました。試食をしてきましたが、小豆は、品種によってこんなにも味が違うのかと、正直驚いています。朱鞠小豆は小豆の風味と、しっかりした味が特長です。当店で使っている十勝産の「エリモ」という品種は、どちらかといえば色が淡く、味も淡白で上品な風味の小豆です。どんな菓子を作るのか、どんな考えで味作りをするのかが、小豆ひとつをとっても、こだわればこだわるほど迷路に迷い込んだようになります。

[13]

■北海道研修 [7月29日(金)]

モラロジー菓子部会の研修が北海道で行われ、専務と二人で出席しました。小樽と旭川の菓子屋さんを中心に見学して廻りました。あいにく、台風の影響で、雨降りの中での研修でしたが、いずれのお菓子屋さんも、地元、北海道の食材を大事に扱っていて、誇りに感じていることを、肌で感じ取ることが出来ました。新鮮な原材料を豊富に使える、地の利を生かした菓子作りこそ、北海道の菓子屋の強みですね。私も地の利を生かした菓子屋を目指していますが、広大な小豆畑を尻目に、残念ながら地元で採れる食材の少なさに嘆いています。

[12]

■恵み [7月22日(金)]

梅雨の季節も後半になると、果物が次々と実を結び始めます。山形といえば、さくらんぼが有名です。高価のため、山形の人は、県外の親戚や、お世話になった方への贈り物として使われており、自家消費としては余り食されていないのが現状のようです。
生産農家はかなり収益がいいらしく、皆立派な家を建て、「さくらんぼ御殿」などとうらやましがられていますが、これまでの苦労は並大抵ではなかったと思います。
農家の人たちは、わたしたちの予想以上に苦労の多い職業だと思います。せっかく手塩にかけて育てた果樹や野菜も、収穫前に冷害や風水害に遭えば、一年間徒労に終わってしまい、無収入です。ですから儲ける時にしっかりと儲けてほしいと思います。もしものときのための貯えが必要ですので。
農家の人は一様に神の存在を認め、畏怖の念を持っています。
明日はどうなるか知れないのであれば、天候が穏やかで豊作であれと、ただ神に祈るのみです。

[11]

■七月の俳句 [7月17日(日)]

毎月、約30句ほど俳句を作っています。ほぼ毎日1句の割合で作っていますが、私の場合は気が乗らないと作れないので、作り溜めをしているわけです。半数以上が句屑となって捨ててしまうのですが、生きる証として7句厳選して残しています。毎月この場で発表します。

水無月の滝に剥落ありにけり
野面積弛むや雨後の額の花
神将の影の強さや雲の峰
蝉生る司馬温公の甕破り
腕の無きほとけや双子さくらんぼ
雪渓を冥王星が過ぎりけり
鉄鉢の歪に鳴るや芋の花

私の句は難解とよく言われますが、心象の句が多いので、余韻を楽しんだり、勝手に解釈してください。敢えて解釈はしませんのでご了承ください。

[10]

■どら焼き [7月15日(金)]

当店の主力商品のひとつに「どら焼き」があります。どこでも作っていますので、珍しくもなんともないので、余計に味の比較をされてしまいます。
当店のどら焼きは半自動の機械を取り入れています。銅版が円盤状になっており、種を落としていって焼き上げる方式ですが、生産性は手焼きとほぼ変わりません。しかし、銅版の厚さがほどよく、焼き上がりが非常に良いので、気に入って使っています。この度、そのどら焼きの機械を入れ替えました。1号機が老朽化したからです。これまでと全く同じものです。
実は全く同じ機械を入れ替えしたのは2度目です。大福の餅を作るのに使う「蒸煉機」という機械です。使い勝手がいいものは良い商品が出来るのでうれしいです。

[9]

■(無題) [7月11日(月)]


一般に、生菓子屋の売り上げと気温は反比例すると言われています。気温が上昇すればするほど売り上げが下がるのが菓子屋さんの常識です。ですから夏場は大変です。
夏をどう乗り切るかが、年間の利益額に大きくかかわってきます。
当店では夏場対策を10年前からしてきました。夏場の商品開発、特に水菓子の凝固剤についての考え方をお客様によく説明をしてきました。その他、お客様への利益の還元を、夏の暇なときにこそ実施しようと思い、暑中見舞い券の発行など、積極的に販売促進を進めていきました。おかげさまで、今では沢山のお客様が来店してくださいます。      感謝!

[8]

■今度は次男の心配です [7月10日(日)]

長男の病気が一段落したと思ったら、今度は次男から電話がかかってきました。今年の春から東京の専門学校に入学しましたが、専門学校で出来た仲良し4人組の1人が事故で亡くなってしまい、通夜に行って来た夜のことです。電話の向こうで号泣している次男に、慰めの言葉もなく、布団をかぶって気の晴れるまで大いに泣きなさいと言ってやるのが精一杯でした。彼にとって「死」が初めて身近に感じられる出来事だったでしょう。亡くなった友人には本当に気の毒ですが、これを機会にもっと大人になってほしいと思っています。

[7]

■親心 [7月9日(土)]

息子の病気が気掛かりでしたが、幸い思ったよりも軽いようで一安心です。せっかく山形へ帰ってきたのですから、ゆっくり療養をしてちゃんとよくなってから、また修行に励むように言いました。
病気は大袈裟にするべし。私の持論です。

[6]

■心配です [7月8日(金)]

昨夜、修行中の息子が体調を崩し帰ってきました。今日、病院で診てもらうそうだが、何事もないことを祈るばかりです。
幾つになっても子供は子供。心配をかけられます。私の母も私のことが、いつまでも心配なのでしょうが、孫のことはもっと心配なのでしょう。息子以上に痛々しさが伝わってきます。

[5]

■和菓子講習会 [7月5日(火)]

本日、組合主催の和菓子講習会が行われました。講師は東京製菓学校の小林紀夫教師。学校の先生らしく理攻めの講習会。和菓子を科学したような内容でした。説得力のある説明をしていましたが、なかなか理論通りに行かないのが、また和菓子の面白さでもあると思っています。当店は講習会が開催されると必ず、工場を休んでみんなを連れて行きます。若い職人さんが多いので、今日のような製菓理論中心の講習会もまた、意味のあるものだと思います。明日からは少しは頭を使って菓子を作ってくれるのかなと、期待をしています。

[4]

■今日から [5月27日(金)]

今日から日記を付け始めます。
毎日というわけにはいきませんが、無理をせずに細々と長く続けたいと思っています。よろしくお願いします。

[3]

会長写真

代表取締役会長 隠居

戸田正宏

社長交代を機に会長に就任。新しい世代の戸田屋を優しくも厳しい目で見守っていきます。

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